購読手続きをすると、有料記事を含むすべての記事をご覧いただけます。 購読は こちら から。
私たちの生きる世界では「終わりなき経済成長」をテーマに人々が邁進しています。それをこなすのは大変です。誰もが効率的に働かなければ世界が回らないと思い込んでいます。過剰な世界を支えるのは「強い人たち」です。健康で体が強く、より早く、より多くのものを生み出さなくては勝ち残れない世界が一番なのだろうか?私たちはより少なく、より遅く、より弱い生き方で自由になれるのではないでしょうか?
文化人類学者の辻信一さんが新しい生き方考え方を提案します。
人間も生き物である。私たちは人間らしく、生き物らしく生きているだろうか? 自然と調和して生きていくために必要な、最低限の条件を奪ったり、奪われたりしていないだろうか?
狩猟社会には、強者が弱者を一方的、暴力的に支配するのとは違う、ヒトと動物との関係がある。改めて、現代日本という社会に生きているぼくたちが、はたしてどのように動物や自然と向き合っているだろう?
私たちはともすると、この世が人間だけのためにあるかのような錯覚を起こす。 自分たち人間だけが「人間」というにふさわしい存在だというのも、とんだ思い違いなのかもしれない。
ナマケモノ倶楽部をつくって間もなく、ぼくは学生たちとのスタディ・ツアーで南米エクアドルのアマゾン川源流地域を訪ねた。そこで出会ったのは湖の神様と……。
ナマケモノから学んだことは「必要なもの以上は要らない」ということ。ナマケモノは多くを求めないから、他者と争うことなく、仲良く共生できるのだ。人は求めるから争うことになる……。
私たちが生きている現代社会ではムダはほとんど犯罪のように扱われている。時間をムダにせず、有効に効率的に使うことが「強さ」のひとつだと。そうやって現代人は大切なものを失っているかもしれない……。
どこから見ても弱虫のように見えるナマケモノだが、実は「生存」という基準から見れば、なかなかの強者らしい。 競争に勝ったものしか生き残れないという「弱肉強食」のイメージと異なる現実とは??
生物にとってもっとも重要なことは生き残ること。でも「強い者が生き残る」とは限らない。弱肉強食は自然の中のほんの一局面だ。 全体を見渡すと違った世界が見えてくる。
「強い」と「弱い」は絶対的な価値なのか? 強い者が正しくて、弱い者が間違っている……とは限らない。 「弱さ」について考えるとはどういうことか。
文化人類学者。環境活動家。明治学院大学国際学部教員。通称「ナマケモノ教授」。「スローライフ」「GNH(国際総幸福)」「キャンドルナイト」「ローカル化」「直耕」などをキーワードに環境=文化運動に取り組む。著書に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)『「ゆっくり」でいいんだよ』(ちくまプリマー新書)「ぶらぶら人類学」(SOKEIパブリッシング) など。