イラスト:長尾謙一郎
ストリーミングミュージックの時代が始まった
柴那典(以下、柴) 今回の「心のベストテン」も、いろんなテーマをもとに今おもしろい音楽について熱く語っていこうと思います!
「2015年、本当に行くべき夏フェスはどれ?」「Kis-My-Ft2が“攻める”理由」「ミスチルとZEDD、Iの時代のポップ恐竜とWEの時代のEDM」「悪意をゴージャスに昇華するポップの力」「アラバマのド田舎から変わりゆくアメリカ」「現代シンガーソングライター論」「オリジナルラブ的成熟J-POP論」「GLAYに学ぶブランド論」「LINE MUSIC、Apple Music、そして……」「テイラー、ZEDD、ミスチル、道重……1989年生まれの革命者たち」
柴 まずは、タイムリーな話題なんで、新しい音楽サービスの話から行きましょう。
大谷ノブ彦(以下、大谷) いいですね! これは、実はなぜ我々がこの「心のベストテン」をやってるのか?という話にもつながる話ですよ。
柴 LINE MUSIC、AWAと、5月から6月にかけて新しい「聴き放題」の定額制ストリーミング音楽サービスが続々と始まりました。Apple Musicも6/30に100以上の国でスタート、日本でも「まもなく登場」とされています。海外では一般的になっているSpotifyも近く日本に上陸すると言われていますし、グーグルも定額制の音楽配信を始めました。
大谷 ストリーミングミュージックの時代が始まった。これはね、黒船です!
柴 大谷さんはこの一連の流れはどうとらえていますか?
大谷 僕はね、はっきり言って賛成派です。アーティストにどれだけ利益がいくのかとか、CDはどうなるのかとか、いろんな議論がなされるとは思いますけれど、少なくとも誰にもこの波を止めることはできない。これから音楽を聴くツールが変わっていくことは間違いない。柴さんは?
柴 僕もこの変化はすごくポジティブにとらえていますね。早く始まってほしいと、ずっと思ってました。
大谷 これが始まると何が変わるか。音楽を簡単にシェアできるようになるんです。特にLINE MUSICは、スタンプと同じように曲を送れる。
柴 今までは友達同士でCDを貸し借りしていたのが、LINEのトーク画面上でやれるようになった。
大谷 LINE MUSICには学割料金があるのもいいですね。一般は1000円ですが、学生は600円で一ヶ月聴き放題になる。
柴 実は僕らもすでに使ってますしね。この対談の打ち合わせをLINEでやっているんですが、そこでもすでにいろんな曲が飛び交っている。
大谷 僕はね、LINE MUSICがスタートした6月11日に、サービス開始を記念したトークイベント※をやったんです。Crystal Kayさんがゲストで僕が司会だった。「LINE LIVE CAST」という生配信番組だったんですが、これが、フタを開けたら25万人集まったんですよ。
※ Crystal Kay「LINE MUSIC」始動を祝う「新しい音楽の発見も」- 音楽ナタリー
柴 え? それはどこでやったんですか?
大谷 LINEのアプリの中で動画を生配信していて、ニコ生のように視聴者のコメントを送ることもできる仕組みなんです。それを25万人が観ていた。これ、はっきり言ってテレビの深夜番組に出るよりもアーティストにとっては大きなプロモーションになりますよ。
柴 確かにそうですよね。
大谷 しかもそのほとんどが10代から20代前半ですからね。もちろん、LINE MUSICは、ソフトの使い勝手がこなれていなかったり、アーティストによっては楽曲がそろってなかったり、いろんな問題点はあります。でもそれはこれから改善されると思いますね。
アメリカでは「リコメンダー」という職業が生まれている
柴 AWAはどうでしょう? エイベックスとサイバーエージェントが始めた音楽配信サービスで、プレイリスト機能や使い勝手の評判が高い。
大谷 AWAはアメブロと連動して、タレントと一緒にいろんなことをやっていったらおもしろそうですよね。僕も会員です。
柴 そして、この対談を収録している時点ではサービスはスタートしていませんが、Apple Musicは提供曲数の多さがポイントになりそうです。
大谷 でもね、正直「どのサービスが勝つか」なんて、僕らにとってみればどうでもいいんですよ。
柴 そうですよね。そういう話は、経済誌とかIT系のメディアに任せればいいと思います。
大谷 大事なポイントは、ストリーミングが普及すると音楽の聴かれ方が大きく変わるということなんです。
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