アラフォー男子の決断のポイント
「誰とやるか」——この言葉は、実は私の古巣リクルートの出身者がよく口にする言葉です。私がこの言葉と初めて出会ったのは、20代後半の頃でした。当時の取締役が社内報で語っていた言葉でした。他にも出身者何人かから聞いた言葉です。
やや処世術的な話になりますが、よくも悪くも日本という国で働くには「誰とやるか」は大事な考え方です。というのも、ある程度の企業に総合職で採用された場合、勤務地、事業部、職種などは必ずしも自分の意見が通りません(この仕組みについてはもちろん、賛否両論ありますが、本題ではないので、ここでは掘り下げません)。そう考えると、その企業に勤めている社員たちと価値観が合うか、組織風土が合うかということが大事になってきます。だから「誰」とやるかが大事なのです。
私が大学院を選ぶ際に考えたポイントもここです。どの先生、どんな学生と一緒に学びたいかということを考え、決めました。「何」を学ぶのかだけで考えるなら、やや極論ですが、本を沢山読む、NHKなどの教養番組や放送大学の講座を見たり、iTunes Uなどで世界の大学の講義を覗けばいいわけです。
ただ、大学院に行くということは、指導教官や他の院生と学ぶわけです。どの先生のもとで学びたいのか、どんなタイプの学生が集まるのか。この視点を持っておくべきです。
私が、一橋大学大学院社会学研究科を選んだ理由もそこでした。この先生のもとで学びたいということが明確に決まっていたこと、またもともと母校なので学風、集まっている学生の雰囲気などもだいたい分かることもポイントでした。
自分が師事したい人は、私が学部時代の大学2年生の時、ゼミで履修していた先生でした。理論に強いこと、そして労働社会学だけではなく、社会学全般に強い人でもあるのがポイントでした。自分は企業社会の現場を直接覗いているわけですが、あえて企業社会との最前線から距離をおいているというのもポイントでした。自分は対象に近すぎるところにいるために、逆に本質が見えないのではと考えていたからです。自分の弱い部分をその先生から学べそうだと考えたわけです。
また、やや後ろ向きの理由を言うならば、先生と一から人間関係を構築するのは大変だとも考えたからです。いや、これは後ろ向きだとも言えないかもしれませんね。入ってみて、先生が思っていた人とは全然違って、学問もなかなか習得できず、たちまち挫折……。って、これは日本の新卒採用で起こっている企業と学生のミスマッチと一緒じゃないですか! 知っている人に学ぶことは悪くない、むしろ良い選択肢ではないかと私は考えます。