コレクション永久機関1 
—何も買わないコレクター

あるときは物書き、またある時はゲームデザイナー、しかしてその実態は……蒐集(しゅうしゅう)原人を自称するとみさわ昭仁さん。子供の頃からとにかくモノを集めまくってきたとみさわさんに、コレクターとは何かについて3週に渡ってご寄稿いただきます。まず第1週は、とみさわさんのコレクション遍歴について。突き詰めるとコレクターは”何も買わない”とのことですが、いったいどういうことなんでしょうか……?

自分はコレクターだ。意識して最初に何かを集めることをしたのは、小学生のときの酒ブタだった。酒の一升瓶の栓からコルク部分を取り去った状態のものね。これをメンコみたいにして遊ぶのが流行ってたのよ。日本盛とか菊正宗とか剣菱とか、いろんな柄があって楽しかったんだ。うちの親父は呑ン兵衛だったから酒ブタの入手には困らなかったけど、下戸のセガレはキッコーマン醤油のフタで勝負に参加したりして嗤われてたっけ。

その次に手を出したのは切手。1960年代に切手ブームがあったので、その影響もあったんだろう。もちろん「見返り美人」や「月に雁」なんか買えるはずもないので、1円とか5円の現行切手を揃えるところから始めて、お魚シリーズや国体シリーズなんかを一生懸命に集めてた。そのうちストックブックに入れるだけじゃ満足できなくなって、アルバムのリーフにヒンジで貼付けて、烏口で枠線引いてトピックを書き込んだりしてた。何を言ってるかわからないだろうけど、わからない方が正常だから気にしなくていい。

それ以後も怪獣のゴム人形(キン消しなんて言葉はまだなかった)だの、ミニカーだの、映画のパンフだの、望月三起也の単行本だのと、なんでもかんでも集め狂っていった。貯金なんかできるはずがない。小遣いは常になんらかの集める対象に消えていった。自分で働くようになってからもこの癖は止まることがなく、廃盤歌謡曲のドーナツ盤を集めたりしていた。それがきっかけでアイドル雑誌の編集部にもぐりこみ、そのままフリーライターにもなってしまった。

やがて、フリーライターからゲームデザイナーになり、なんの間違いかけっこう儲かっちゃったりしたので、ジッポーライターなどという金のかかるコレクションにも手を出した。最初はね、1個1200円とかだから、たいしたことないんだよ。ところが、深みにはまってジッポー社の歴史とか、モデルチェンジの変遷とかを知っていくと、それぞれの代表的なモデルが欲しくなるわけ。で、これがアンティーク・ショップで買えるわけなんだけど、物によっては2万も3万もするのね。でも小金ならあるもんだからさ、そういうのをポイポイ買えちゃうの。いちばん多いときで300個くらいジッポー持ってたな。1個あれば一生使えるのにね。


300個以上あったジッポーは、コレクター仲間と一緒に作ったオリジナルデザインのものだけを残して、それ以外はほとんど手放してしまった。

そうやって集めたジッポーだけど、あるとき禁煙したのをきっかけにして手放すことにした。コレクター同士の即売会で全部売っちゃったんだ。このとき自分の中で何かのスイッチが入った。それが何のスイッチかは、まだ自分にはわかってなかったんだけど—。

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