森高千里が管理している若さについて

今回取り上げるのは、「私がオバさんになっても」でおなじみの森高千里さん。久々に芸能界に復帰し、そのまったく衰えていない容姿が話題となった森高さんですが、その「若さ」にはある仕掛けがあるそうで……。森高さんの「若さ」の巧妙な管理法を分析します。

自ら設定したオバさん像をクリアしていく

もう10年以上も前になるので記憶が正確ではないが、伊集院光がラジオでこんな話をしていた。寿司屋さんに行き、「約束通り来たぜ」とつぶやきながら暖簾をくぐり、黙々と寿司を食す。その翌々日に同じ寿司屋へ出向き、数々の無礼を働き、しびれを切らした大将がキレる。「おととい来やがれ!」。大将はふと思い出す、おととい、目の前にいる男が「約束通り来たぜ」とつぶやきながら入店してきたことを……。

このところ、森高千里がすっかり重宝されているが、芸能界に復帰し始めた時分に散々使われたのが「『私がオバさんになっても』を歌っていた森高だが、まだまだちっともオバさんにはならず、若さを保っている」という誉め称え方だった。森高は確かにそのハードルをひょいっと乗り越えていた。「おととい来やがれ」とは逆の方向だが、こちらも時空を統率していたのだ。つまり、自ら設定した「ミニスカートはとてもムリよ 若い子には負けるわ」というオバさん像をクリアすることで、清々しくカムバックしたのである。

「年取ったわねー」「声出なくなったねー」「太ったねー」「厚化粧ねー」

森高千里が司会を務めるも視聴率が伸び悩んでいる音楽番組『水曜歌謡祭』。ある日の放送回は、ウェディングドレスを身にまとった久本雅美がお気に入りのウェディングソングを紹介するという特集だった。そのコーナーでの最初の曲が小柳ルミ子の「瀬戸の花嫁」。久本が相変わらずの「結婚したーい」を連射し、小柳は相変わらずの「キレーイ」的な声かけを素直に受け止める。予想通りのコミュニケーションで、それぞれがしっかり心地良くなっている。それによって番組に充満した徒労感を視聴者が引き受けるという、ウェディングを祝っている場合ではない環境が生まれていた。

実家暮らしの頃、両親はことあるごとに、主にテレビ東京で放送されていた「懐かしのメロディ」系の番組にチャンネルを合わせては、出てくる往年の歌手を次々と「年取ったわねー」「声出なくなったねー」「太ったねー」「厚化粧ねー」と罵っていた。でもテレビの前の2人に徒労感はなく、むしろ自由気ままにバッシングできる環境を楽しんでいるようだった。あれから10年近くが経つが、様々な技術の向上もあり、かつての誰それが加齢しても、そこまで清々しく罵れる状態ではないことが増えてきた。

森高千里・永作博美・原田知世・平子理沙・川島なお美・かたせ梨乃
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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

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365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

shimodakohei 若さは管理するものだろうか。 https://t.co/y3fSFRe4HE 約3年前 replyretweetfavorite

Suzy1283 テレビの中の徒労感を視聴者が引き受けてるって概念分かるなあ… 4年弱前 replyretweetfavorite

nijuusannmiri 「1982年生まれのこちらは、レコード会社の人から「武田さんって、ピンク・フロイドの初来日(=1971年)って行きました?」とスムーズに尋ねられるほどの老け顔なので」 4年弱前 replyretweetfavorite

sizukanarudon ワダアキ考〜テレビの中のわだかまり〜|武田砂鉄@takedasatetsu https://t.co/kmk1RALJO1 森高千里セルフカヴァー https://t.co/GfXrJ4duG3 4年弱前 replyretweetfavorite