親に愛されない私はどう変わっていったのか【第2回】

自傷、自殺念慮、依存に苦しみ、強迫性障害、境界性パーソナリティー障害、双極性障害などを抱えながら生きてきた著者。生きる意味を見出せない真っ暗闇からの「生還」を綴った、告白エッセイ「死にたいままで生きています。」の第二回。父から「失敗作」と怒鳴られ続け、私は「世界一いらない人間」だと思っていた幼少時代を経て、思春期にどのように真っ暗闇へ転落していったのか、振り返ります。


死にたいままで生きています。(ポプラ社)

家庭内暴力

私は髪を染め、柄の悪い仲間たちとつるむようになった。

父の三度目の転勤で引っ越した先の中学の風紀が乱れていた。そこに馴染むためには、自分も同じように不良っぽくあらねばと思ったのがきっかけだった。スカート丈を伸ばし、派手な色の上着を纏い、夜遅くまでファーストフードショップでたわいない話に興じる日が増えた。

世間からは不良というレッテルを貼られがちな友人たちは、それぞれに家庭に重い事情を抱えていた。親の暴力、不倫、育児放棄、その中で彼女たちは、それを受け入れ生きようと必死だった。

ある時、友人のうちの一人が、頬を腫らして登校してきた。目の周りには青あざが広がっている。

「どうしたの、それ!」

驚く私に、彼女は何でもないことのように告げた。

「オヤジに殴られた」

彼女の父は気に入らないことがあるたび、口ではなく手を出してくるのだという。今まで親に手を挙げられたことのなかった私は衝撃を受けた。

やがて中学三年生になり、私たちは受験を控えた。志望校に悩む私が彼女に聞くと、彼女は迷わず言った。

「高校は行かない」

そんな選択肢は許されないと思っていた私は、意表を突かれて訊ねた。

「高校に行かないでどうするの?」

「理容の専門学校に行く」

彼女の家は、小さな理髪店を営んでいた。彼女は言う。

「あんなオヤジだけど、私以外、継ぐ人間もいないしね。どうせ高校に受かるほどの頭もないし、専門学校で学んで家を継ぐ」

胸を突かれた。私以上に家庭に込み入った事情を抱えている彼女が、それでも家庭を大切にしようとしている。目標を持って生きている。自分が小さく見えた。

「自分がしたいことは何なんだろう」

漠然と考えるようになった。

彼女たちを見ていると、勉強をして、いい成績を取るということの意味が薄らいで見えた。それよりも、ちゃんと自分で働いてお金を手に入れたい。そして、この居心地の悪い家から、一日も早く外に出たい。

安易な考えだったが、私は「学校に行かずに、マンガを描いて生計を立てたい」という夢を抱いた。それが許されないのであれば、演劇部に入部していたので、演劇科のある学校に進み、将来の仕事につなげたいと。

学校を偏差値の高さでしか見ない父は、当然いい顔をしなかった。私の進路希望が父の期待に添わず、苛立った父は吐き捨てた。

「あんなクズと付き合っているから、おまえもクズになったんだ」

自分だけでなく友人のことまで否定され、堪忍袋の緒が切れた。

「あの子たちはクズなんかじゃない! 取り消して!」

はじめての父への反論だった。だけどその言葉を聞いた父は、外出先の焼肉屋であるにもかかわらず顔を赤くして怒鳴った。

「誰のおかげでメシが食えていると思ってるんだ!」

「父を許せない」という感情と、「それでも自制しなければ、この家では生きていけない」という現実のはざまで葛藤した。

やがて行き場のない怒りは、自室の破壊につながった。

高校受験に向けてのストレスも溜まっていたのだろう。私は教科書を手当たり次第に破くと、本棚を倒した。それでも収まり切らず、思いきり壁を蹴った。借り物の社宅に大きな穴が開いた。

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死にたいままで生きています。

咲 セリ

思春期の頃から自傷、自殺念慮、依存に苦しみ、強迫性障害、境界性パーソナリティー障害、双極性障害などを抱え、「世界でいちばんいらない人間」だと思っていた「私」が、ありのままを語ります。

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