※本連載の参加者の方の発言は、あくまで個人の見解にもとづくものとなります。
【メンバー紹介(仮名)】
『天空戦記シュラト』アンソロジーから腐女子に目覚め、『サムライトルーパー』『キャプテン翼』といった作品から、ガンダムなどのサンライズ系、最近の『TIGER&BUNNY』まで幅広く網羅。バブル景気の恩恵は受けていないものの、同人バブル時の話にも明るい。
36歳/知財法務/腐女子歴22年
リアルのバブルまっさかりの時期にOLに。バブルの空気にどっぷりつかり、腐女子からは足抜けしそうになったが、『スラムダンク』で出戻り。同人業界のバブルもたっぷり経験している。自分でもBL小説を執筆している。
46歳/会社員/腐女子歴35年
『風と木の詩』で目覚め、萩尾望都作品や『ヴェニスに死す』などの海外映画で育った、生粋のJUNE女子。男同士のぎりぎりの関係に萌えるため、「腐女子」や「BL」といった言葉にはあまりピンとこず、二次創作や同人誌の類にもふれてこなかった。
47歳/自営業(飲食店経営・菓子製造販売)/腐女子歴30年以上
大阪在住。1980年代から同人誌即売会に通う大ベテラン。現在は、大学生の娘さんとともにどっぷりBLにハマり、そのお友達ともBLトークをする仲。「BL短歌」同人誌にも参加している。
50歳/主婦時々ハンドメイド作家/腐女子歴36年
ホテルでお茶会、ゴミ袋に札束、ダンスパーティー
岡田育(以下、岡田) 今回ベテラン腐女子のみなさんに特にお聞きしたいと思っていたのが、ずばり「同人バブル」の話です。ネット上で流布されているような「ものすごいバブル話」って実体験で持ってますか?
バブル美 私、九州に住んでたんですけど、ちょうど『スラムダンク』にハマって、東京のコミケ行ってましたね。ハマリたての最初の夏コミでいくら使ったかなあ……。スラダンだけで、ダンボール5箱くらい買ったんですよね。
岡田 えっ、数える単位、「箱」!? 5箱!! しかも、きっと今の物価で考えちゃだめですよね……。
バブル美 ええ、一冊あたりが高くて、安くても2000円とか。
フィフ乃 今の相場の4倍くらい?
バブル美 なんか、大手サークルの出す本は大体ハードカバーだったんですよ。
サティ子 そうそう。B5で100ページ超えとか、そもそも分厚い本が多かった。装丁も凝っていて、本物のもみじが押し花として刷り込まれた遊び紙を使っている本を買ったことがあります。
バブル美 CLAMPさんのメインシリーズだった『SHOTEN』の最終巻は、「結婚」がテーマだったので、引き出物に見立てた化粧箱入りの同人誌になってました。大手サークルのほとんどが、ハードカバーで箔押し、トレペ使用、フルカラー印刷がデフォルトだったと思いますね。
岡田 今とは全然お金のかけかたが違うということがよく伝わるエピソードですね……。って、同人誌買ったことのある人か、出版印刷業界の関係者しかわからないと思いますけど。強引に例えると、「新築の物件はみんな総大理石で庭に噴水がついてたので、家を買うといえばそれを買っていた」みたいな……?
編集R この座談会の読者の方からも、「開くとオルゴールの鳴る同人誌」や「作品をイメージした香りつき同人誌」を持っていたという情報が寄せられました。
バブル美 もちろんピコサークル(※)もいっぱいあるから、安いコピー本も出ていましたよ。でも、壁一周まわったら10万円はあっという間になくなります。1つのサークルさんだけで絶対1万円は使う。まず着いたらカートを組み立てて、そこにダンボールをセットして、本をどんどん放り込んで買っていくという……。
※ピコ:小部数発行やコピー誌メインの小規模サークル。国際単位「pico」からきている。
サティ子 買う量が尋常じゃなかったですよね。売り手側のサークルは、スペースに70リットル入りのゴミ袋を設置して、そこに受け取ったお札をどんどんつっこんでいってた。