「バブル期」を知るベテラン腐女子のみなさん
岡田育(以下、岡田) みなさん、こんにちは。さまざまな境遇の一般腐女子の方をお迎えし、ふだん腐女子どうしでなかなか話さない赤裸々トークを展開してきた「ハジの多い腐女子会」、好評につき第4弾開催となりました。今回は「バブル期を知る腐女子」のみなさんに集まっていただきました。
一同 よろしくお願いいたします。
岡田 バブルといえば、世間的には80年代後半から90年代初頭、つまり昭和の終わりから平成初期にかけての日本の好景気と、それにともなうさまざまな社会現象を総称する言葉です。が、今回着目するのは、その好景気の影響を受けながら日本のオタク業界で起きていた「同人バブル」についてです。
2000年代以降に「腐女子」という名称が生まれるずっと前の出来事ですが、「やおい同人誌の売上で一軒家を建てた人がいる」とか「人気作家は外車に高級ブランド、冬のコミケには毛皮のコートで現れた」などの逸話は、今も語り草ですね。現在35歳の私も当時は小中学生。バブル期の「成人済み腐女子」の実態については、実はよく知らないんです。今もネット上で語り継がれるこれらの「伝説」は、はたして実在したのか? 21世紀の腐女子との精神性の違いは? などなど、当時を知るみなさまに伺います。もちろんバブルにとどまらず、JUNEからBLへの移り変わりといった腐女子史もふりかえっていきたいと思います。もしかしたら「ベテラン腐女子」編と言ったほうがいいかもしれないですね。では、今回も自己紹介から。
岡田 35年! 今までよりも年齢層の高いみなさんにお集まりいただいたので、腐女子歴が長いのも当然ですが、計算すると目覚めた時期は小学校高学年あたりなんですね。
バブル美 はい。地方に住んでいたので当時はまったくそういうものに触れる機会がなかったんですが、東京からの転校生に見せてもらった雑誌『JUNE』で目覚めましたね。日本全体が好景気だった90年~93年ごろは、それこそリアルなバブルの空気に夢中で、腐女子から足を洗ってリア充していた時期もありますが、『スラムダンク』で舞い戻りました(笑)。『テニスの王子様』や『鋼の錬金術師』なども通って、最近は『ハイキュー!』が好きですね。
岡田 なるほど、バブルがはじけた90年代半ばに『スラダン』の磁力でオタクに引き戻された、と! 当時のお話、あとでぜひ聞かせてください。そしてジュネ絵さんもバブル美さんとほぼ同年代の47歳、目覚めがやっぱり、小学校5年生。
岡田 本当に、わざわざお越しいただいてありがとうございます。ジュネ絵さんもずっと地方にお住まいですよね。BLとの出会いのきっかけは?
ジュネ絵 本屋で『風と木の詩』をうっかり手にとってしまったんですよね。なんか、雷に打たれたみたいになりました。「私の探していたのはこれだったのか!!」と。でもこんな本を買って親に見つかったら怒られる……と思い、しばらくは本屋へ立ち読みに通いました。その後結局購入し、ずぶずぶと沼にはまっていったんですが、それから今まで、ずーっと腐女子であることは隠しているんですよ。同人誌も手にしたことがなくて。バイブルは今でも『トーマの心臓』です。最近流行りの「ボーイズラブ」というよりは、少年期の不安定な精神のなかでぽっと生まれる関係性に萌えますね。
岡田 たしかに、ジュネ絵さんは「腐女子」というより、「JUNE女子」という感じですね。傍目にはどれも同じに見えるかもしれないけど、これが、違うんだよなぁ……。JUNEからBLへの移り変わりにおける女子たちの精神性の変化についても、ひもといていければと思います。そういえば、フィフ乃さんも『風と木の詩』で腐的な目覚めを迎えたそうですね。なんと、娘さんも腐女子だとか? 大阪在住ということで本日はSkypeでの参加です。
岡田 世代を超えた腐女子の交流! 素敵ですね。そして最後がサティ子さん。お三方よりは少し年代の下の、36歳。
岡田 わかる! めちゃくちゃわかる! アニパロ二次創作でやおいを知り、やがてBLにハマった同世代、嬉しいです(笑)。
サティ子 やはり地方暮らしだったんですが、コミケには16歳のころ初めて参加しました。西暦でいうと1995年ごろですね。「同人バブル」どまんなかかというと微妙ですが、やはり今とは空気が違いましたし、仕事でアニメ関係のショップにつとめていたこともあるので、そうしたお話はできると思います。現在は『TIGER&BUNNY』が好きですね。同じ年代の方が多くて、居心地がいいです(笑)。
岡田 『タイバニ』の居心地良さ、第一弾に参加していた主婦のバニ子さんも言ってたなあ……。というわけで、ベテラン腐女子のみなさんと「温故知新」をテーマに赤裸々トークですよ! ちなみに今回は世代間の差を明らかにしたいということで、バブル期生まれ、BLネイティヴの20代腐女子代表・編集Rにも話を振りますので、よろしく。
編集R 当時のお話、楽しみにしています。よろしくお願いします。
少年愛を描く実写映画が好き
バブル美 お話を聞いていると、参加者はみんな地方出身ですね。私は熊本出身で、バブルの一番いい時期は九州にいて、バブルが崩壊して仕事がなくなった30歳ごろに東京に出てきたんですよ。