幸福が定量化される→人間が完全に管理される→そんな世界は怖い! と多くの人は思いがちですが、その恐怖の本質は「多様性を奪われること」にある気がします。つまり、人間がデータで画一的に管理されることへの不安です。しかし、矢野さんの話を聞いていると、まったく逆で、データによってむしろ多様性が活かされるということでした。考えてみれば、技術は人のために使われるのですから、当然です。
今回は、前回の「幸福」に続き、さらに驚くべきあるものを科学します。その「あるもの」とは……。
「運」を科学する
—— 「幸福」が定量化できるというお話、やっと理解できてきました。そういえば、「運」の法則についてもなにかわかったんですよね?
矢野和男(以下、矢野) ええ。「運」というとちょっと胡散臭いものにも聞こえますが、昔の人は「運」について真面目に考えていたんです。渋沢栄一や幸田露伴も著作のなかで「運」について論じています。現代のビジネスの場では誰も運の話をしませんが、実は運を「人生や社会で起こる好ましい出来事」つまり、「望ましい確率現象」だとすれば、統計現象として扱えます。
—— それでビジネスにおける「運」を、「確率的に起こる好ましい出来事」と定義し、さらに、人との出会いがそれを生み出すと考えたわけですね。
矢野 はい。単純に人と会って話す人数が多ければ「運」と出会う確率も増えるわけです。自分では解決できない問題と出会ったときに、誰か他にそれを解決できる人がいれば、なんとかなるということです。
—— 友達がいっぱいいるだけでいいんですか?
矢野 その人がどんな人か、そしてその人とどういう関係か、というのも重要です。人と人のつながりのかたちをセンサで測ってみたんですが、どういうかたちだといいのかまでわかっています。ただ、出会うだけではだめで、会話の質も重要なことがわかっています。
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