担当編集者の太鼓判!
この本の企画立案時につけていた仮タイトルは『一人の夜に』でした。一人で寂しさを感じている時に読むと蒼井さんに励まされ明るい気分になれる本というイメージでした。しかし原稿がまとまった時、違うな、と思いました。蒼井さんは誰かを明るくしようとして言葉を紡いでいるのではない。読み手が共感し、勝手に幸せな気分になるのだと私は思いました。強弱をつけて各ページに配置された言葉は押しつけがましさとか、相手を納得させようとするような激しさはなく、自然に読み手の心に入り込んできます。よくある名言集ではありません。読むと言葉が刺さるのに痛くない。本当に「やさしい本」です。
(KADOKAWA 田宮昭子)
標準語は出かける際のみだしなみ
── 前回は、フォロワー13万人の一般人である蒼井ブルーさんが、どういう意識でつぶやいているかを伺ったんですが、蒼井さんって、いつからこんなステキなことが言えるのですか?
蒼井ブルー(以下、蒼井) 何ですかそれは。もし僕が石油王だったら札束あげるとこでしたよ。
── ぐっとくる言葉ばかりです。何か特殊な訓練をされているんですか?
蒼井 いやホントに札束出ませんので(笑)。でも訓練じゃないですけど、思ったことや印象に残った人の言葉なんかをメモに残しておくとか、そういうことはしてます。街中で起こったおもしろいできごとなんかもそうですね。よほどのことでもない限り案外すぐに忘れてしまったりするので。もったいない。
── 自分のツイートを消すことありますか?
蒼井 全然ありますよ。こんな風に言いたかったんじゃなかったのになあとか思うと。
── そうなんですね。誰かを傷つけるツイートとかですか?
蒼井 うーん、まあそういうのもそうなんですけど。例えば誰からも完璧に愛されることって無理だと思うんですけど、同じように、誰のことも絶対に傷つけないことも無理じゃないですか。なので過剰に意識する必要はないと思うんですけど、どうなんでしょうかね。
── なるほど。基本的に、明るい気持ちになる言葉をたくさんつぶやかれていますね。
蒼井 おバカなやつが大好きなので、しょうもないことはどんどん言いたいですね。翌日職場でイジられますけど(笑)。
── ご自身のためにつぶやいた結果、「元気をもらった」など多くの人に支持されています。言葉の力を感じる時はありますか?
蒼井 人のツイートを見ていて、一人でも声に出して笑ったりとかよくするので、そういう時は特に感じます。
── どういう言葉が響くんでしょうか?
蒼井 内容もそうですけど言い方もありませんか? これは良くも悪くもですけど。悪い方の意味でいうなら、彼氏彼女の間柄でも言い方ひとつで大げんかになったりしますし。
── 恋人あるあるですね(笑)。
蒼井 上手く使い分けができたらいいんですけどね。でも難しい時もある。
── 確かに、それは場面やタイミングによりますね。
蒼井 相談に乗ってあげる時とかもそうですけど、話を聞いてほしいだけで実際は大して悩んでない人に「こうした方がいいんじゃない?」みたいに言うと思わぬ反論に遭ったり。
── はいはい。
蒼井 そういう時は「相槌だけくれ」とか言っておいてほしいですね(笑)。そしたら「そうだね」とか「わかるよ」とか「楽にね」みたいなのばかり言ってあげられますもん。
── 確かに。
撮影:蒼井ブルー モデル:あわつまい
人の内面からにじみ出るようなかわいさってある
蒼井 話が逸れますけど、下ネタみたいなおバカなことって堅く言ったらおもしろいみたいなのないですか?
蒼井 例えば「おっぱい揉みたい」みたいなツイートが流れてきたら、それだけでも僕は好きなんですけど、「僕はね、おっぱいが揉みたいとすら思うんだよ」みたいなのだったら、下手したらあとで思い出し笑いまでしてしまうと思うんです。
── 今J-Popの歌詞かと思いました。
蒼井 いや、おっぱいの時点で別にもう何でもいいんですけど。よくわからないですけど。でもギャップのおもしろさってありますよね。
── 本書でも「会う前に『わたくし髪型を変えましたゆえ お気づきのほど宜しくお願いいたします』と送信してくる人かわいい。」というのがあります。
蒼井 これは完全にかわいいいですね。これは完全にかわいい。
── 二度言いました。
蒼井 これは知人から送信されてきた文章だったんですけど、かわいすぎて思わずツイートしました。普段タメ口なのに急にかしこまるというギャップが完全にかわいいです。新しい髪型を見せたいけど恥ずかしさもあって、もう前もって言っておいてやろうという。
── 確かにかわいいです。
蒼井 勝手に抱きしめたりしたいですよね、まあできないんですけど。人の内面からにじみ出るようなかわいさって、変な話それがおっさんでもかわいい訳じゃないですか。このおっさん髪型変えて何モジモジしてんだ、かわいいな、まあおっさんなんだけど、みたいな。よくわからないですけど。
── 少し言い方を変えるだけで、おじさんでも、かわいくなれるわけですね。
蒼井 あるかもしれないですよね。物事の本質に行き着く前に言い方でつまずいてしまって、相手にちゃんと届けられないみたいなことって結構ありますし。まあそれが誤解ってやつなのかもしれないですけど、かわいい言い方とかができたら色々とスムーズにいけそうな気がします。
── 最後に、ご自身の言葉が一冊の本になりました。「いい感じのつぶやき」の専門家として、これから作家と名乗ることもできるわけですが、そんな野望はあったりしますか?
蒼井 いやホントに何を言わせたいんですか? いい感じのつぶやきの専門家とか罠でしかないのでやめてください(笑)。
真面目な話として、本を出させていただいてうれしかったり楽しかったりはしましたけど、例えばじゃあ次は長編小説だみたいな野望は全くないです。そもそも僕には無理ですし、あと痔になりそうで嫌です。痔は面倒だって聞いてます。でもアレです、コラム的なやつにはとても興味があります。下ネタもOKだと助かりますね。あとはラジオに出たいとか。本と関係ないですけど。言うのはタダなので言ってみました。あと彼女は絶対に欲しいです。なんかすいません。
(おわり)
聞き手:中島洋一 構成:力石恒元 撮影:蒼井ブルー
Twitterフォロワー数13万人超え、フォトグラファー・蒼井ブルーさんが、よりすぐりのつぶやきを厳選し、小松菜奈さんを撮り下ろした写真と書き下ろしエッセイを加えて書籍化しました。