宇宙掃除

第3回】有人か無人か

スペースデブリ(宇宙ゴミ)を除去するために、ASTROSCALEという会社を立ち上げた岡田光信さん。彼が取り組んでいる宇宙のこと、彼が体験しているわくわくするような体験を、エッセイで毎月お伝えしていきます!

宇宙ゴミを除去する方法は、専門家の間で意見が割れている。

まだ誰も答えを持っていない。
だからこそ面白い。

絶対に優れた方法論を見つけ出してやる。
僕はそう思っていた。

まず、決めなきゃいけないのは、「有人でやるか、無人でやるか」だった。

実は人類は、過去に宇宙ゴミの除去をしたことがある。
しかも、有人でだ。なら、そのマネをしたらいいんじゃないか。

僕はそう思っていた。

1992年。

軌道投入に失敗した衛星を、スペースシャトルが取りに行った。最初は大型のロボットアームで回収しようとしたができなかった。ゴミは回転している。ロボットアームで捕まえるのは困難だ。

最後は、宇宙飛行士3人が船外に出て「素手」で捕まえた。

これがその時の写真

"Three Crew Members Capture Intelsat VI - GPN-2000-001035" by NASA

ゴミをとるときは、どうにかして捕まえないといけない。その捕まえ方を無人のロボットでやるのか、人の手でつかまえるのかを悩んだ。

スペースシャトル1機を飛ばす平均費用は15億ドル。だから1個のゴミを回収するのに1800億円かかったことになる。衛星を1機打ち上げるのにかかる費用は数億円〜数百億円だ。ゴミを回収するのにその何倍、何十倍ものお金をかけるなんてなんともバカらしい。

スペースシャトル案は、コストがかかりすぎる…

回転しているゴミを捕まえるのは至難の技だ。ロボットvs人間。宇宙ではどちらが有能か。これは難しい問題だ。

ロボットは腕の自由度が低い。宇宙の CPUの能力は限られているので、常に地上と通信しなければならない。しかし人間は腕や指の自由度が高い。おまけに脳という素晴らしいCPUが頭の中にあるから、その場で見て対応ができる。

有人でやるとするなら、僕にはアイデアがあった。

僕のいるシンガポールの、アジア各国からの労働者に声をかけることだ。彼らは厳しい労働環境で最高のチームワークを発揮する。

「宇宙飛行士にならないか?」と聞くと喜んでなってくれるんじゃないか?

よし、最新の有人宇宙船を作ろうとしている会社に相談してみよう—。

僕は早速アポを入れて、アメリカに飛んだ。宇宙業界に次々と革命を起こしている企業だ。彼らなら安くて安全な有人宇宙船を打ち上げてくれるに違いない。24時間のフライトを経て、真っ青な空の西海岸についた。すぐにミーティングが始まった。

僕「高度800kmの太陽同期軌道に有人で行きたい。6人乗り。あなた方の有人船に大型デブリを出し入れするハッチを作って欲しい。6人は帰還する。作れるか」

相手「Yes」

僕「いつぐらいに可能?」

相手「最速なら2〜3年ちょっとでいけるかも」

僕「いくら?」

相手「わからない。エンジニアを巻き込んで設計を詰めないと。ただ、half a billion(600億円程度)くらいだと思う。」

スペースシャトルの1/3の費用だ。それでも、衛星を打ち上げる費用よりずっと大きい。100億円くらいを期待していたが、難しいようだ。あの彼らでも 。

有人と無人では宇宙船の設計が根本から異なる。安全基準も異なるし、有人船は与圧といって船中を気体で満たさないといけない。テスト工数も断然多い。

絶対に人命を失ってはいけない。そのコストがどれだけ大きいのか改めて知った。いかに安く、回数を多く、ゴミを回収していきたい…

どうするか…

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

コルク

この連載について

初回を読む
宇宙掃除

岡田光信

スペースデブリ(宇宙ゴミ)を除去するために、ASTROSCALEという会社を立ち上げた岡田光信氏。彼が取り組んでいる宇宙のこと、彼が体験しているわくわくするような体験を、エッセイで毎月お伝えしていきます!

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません