成毛流「太赤マジック+裏紙ノート」メモ法
じつは私は、忘れてはならないことをメモする必要が生じたら、わざわざ文字やイラスト、写真が印刷された紙を使います。
具体的には、雑誌の裏表紙や何かが印刷されたコピー用紙です。
そこに、忘れてはならないことの要点のみを記します。
たとえば、「今日17時までに山田さんに、スケジュール変更の依頼をする」ためには、「山田さん ~17時」などとメモします。
そしてその周りに、「☆」や「◎」などの記号を書き添えます。きれいなものではありません。走り書きの星マークであり、二重丸です。
ところで、雑誌の裏表紙やコピー用紙にメモを取っても、そのメモのありかがわからなくなってしまうのでは……と疑問をお持ちの方もいるかもしれません。その通りです。私は頻繁にメモした場所を忘れます。だからこそ、雑誌やコピー用紙がメモに適しているし、星マークや二重丸を書き添えることが必要なのです。
メモをした場所を忘れるということは、メモした内容を忘れるということです。そうなったとき私は、メモした内容そのものではなく、どんな紙に書いたかを思い出すことに努めます。どんな写真があったか、どんなイラストがあったか、そして自分でどんな記号を書いたか。
そうやって、「白い車の写真があったな」とか「星を2つ並べて書いたな」などと、本当に思い出したいことの周辺をビジュアルとして思い出すことで、連想ゲームのように「あっ、そうだ、山田さんに17時までに連絡だ!」と思い出すのです。白い紙に文字だけでメモをしていては、絶対にできない思い出し方です。
コピーに失敗した紙の裏側をメモとして使っている人がいるなら、ぜひ一度、表側を使ってみてもらいたいと思います。
私のメモはビジュアルとして思い出すことが前提です。雑誌や新聞紙をメモ帳サイズに切りそろえたものがもし商品として売っていたら、それを買って使いたいと思うほどです。
メモを取るペンにもこだわりを持っています。
ビジュアルとして記憶しやすいよう太く、モノクロ印刷された紙に書いても目立つように赤色が条件です。なかでも愛用しているのは、ぺんてるの「サインペン」。価格が手頃で書き心地も抜群なこのペンは、1963年発売のロングセラー商品なので、大半の人は使ったことがあるはずです。
私はこの「サインペン」を最低でも2本は普段使う鞄に入れています。
大事な情報は「整理しない」——情報は1枚のPCファイルに
雑誌の裏表紙や、何かが印刷されたコピー用紙に取るメモは、ある程度の時間がたったら、すっかり忘れてしまって構わないものだけです。先ほどの例で言えば、山田さんへ連絡を入れたら、メモの役割は終わりです。
しかし、なかなか役割が終わらないメモもあります。それは、「これについて後で調べてみよう」とか「このネタはいつか使えるかもしれない」といった具合に、その情報を使う〝締め切り〟がはっきりしていない情報を扱う場合です。
私はこの場合、一時的なメモは紙に取るにしても、そのあとで必ず、パソコンに記録します。特別なアプリは使っていません。「ネタ帳.docx」というファイル名をつけたワードの文書に、どんな情報も集約させています。
たとえば、古代ローマの英雄ユリウス・カエサルが、戦いに勝ったことを母国に知らせるため「来た、見た、勝った」というメッセージを送ったことは有名です。その台詞をラテン語では「Veni, vidi, vici」といい、「見た」の「vidi」は「visual」の語源になっているし、「vici」も「victory」の語源になっています。この情報は私にとって「いつか原稿を書くときに使えるかもしれない小ネタ」です。なので、「ネタ帳.docx」にメモします。
このファイルには、「メンデル」など、たった一言のメモもあります。他人が見たらなんのことかわからないと思いますが……私もわかりません。でも、これで大丈夫。「メンデル」というキーワードをネットで検索すると「あ、そうだった。これこれ」と思い出せるからです。「ネタ帳.docx」はネット検索のためのキーワード集でもあるのです。
なので、テーマごとにファイルを分割することはしません。経済ネタも科学ネタも歌舞伎ネタもすべて同じ「ネタ帳.docx」に書き込みます。並べ直しなどの整理はしません。整理してしまうと、そこに書いた文字以上の情報が失われるからです。それに、整理にかける時間がもったいない。情報はランダムに記録しておく、つまり放置プレイをしておいたほうが、思わぬ発想の元になります。
「ネタ帳.docx」はクラウドストレージ「Dropbox」に保管しています。こうすることで、パソコンはもちろん、スマホからも最新版を簡単に参照できるからです。すでにこの「ネタ帳.docx」のサイズは、キーワードをためているだけなのに100キロバイトを超えています。
グーグルが「情報格差」を拡大させる
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