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受付終了】『ソラリス』解説文アンケートのお知らせ

SFマガジン8月号の特集「ハヤカワ文庫SF総解説PART3」では、スタニスワフ・レム『ソラリス』の解説文をプロアマ問わず募集しました。結果、ぜんぶで20通のご応募をいただき、6月9日夜、編集部にて最終選考会を実施。が……?



ということで唐突に始まった『ソラリス』解説文の決選投票は、6月10日(水)の23時59分をもって受付を締め切らせていただきました。
結果は本誌8月号(6月25日発売)での発表となります。

ご投票、誠にありがとうございました!



《ソラリスA》=菊池誠氏

 SFには「ソラリス以前」と「ソラリス以後」がある。『ソラリス』以降、SFは異星の知的生命体とのコンタクトを無邪気には描けなくなった。
 異星の海が実は知性を持つ生命体だという設定が取り立てて特異なわけではない。しかし、本作でレムは、そのような異質な知性を人類がなんらかの意味で理解できるのかという哲学的な問いに真正面から挑んでいる。また、絶望的なラブストーリーも絡めて、物語性も充分。SF史上に聳える孤高の傑作だ。
 ポーランド語版からの全訳となる本書では、以前の版に比べて、特にソラリスの海の振る舞いを報告する章が大幅に増え、それが読んだ印象をがらりと変えている。以前の版を読んだ方も再読すべし。『ソラリス』は終わりであり、始まりである。

《ソラリスB》=牧眞司氏

 想像を超えたものの想像—それはSFの果てなき憧れだ。多くの作家が限界に挑戦してきた。だが、レムの前ではすべて児戯に見える。彼が俎上に載せるのは思考(想像もそのひとつ)の根拠だ。この作品では人間の認識の枠組みは普遍性を持ちえず、惑星ソラリスの海の挙動はあらゆる思考をすりぬける。海は調査隊の記憶からグロテスクな泡の建造物を創るが、その機構も目的もわからない。
『ソラリス』は圧倒的な未知を突きつけると同時に、愛の根源的な不可能性/不可避性を描く小説でもある。主人公の元へ来る恋人は海による再現だが、地球で死んだオリジナル同様にふるまう。恋人の心が真実か虚構か知るすべはない。相手の心を信じるのは恐ろしいが、疑ってしまえばどこまでも苦しい。愛は互いを苛む「残酷な奇蹟」だ。

《ソラリスC》=中野善夫氏

『ソラリス』を読み終えた読者は皆ソラリス学者のような顔になっている。
 長く本文庫で親しまれてきた『ソラリスの陽のもとに』の完全版(二〇〇四年/国書刊行会)の文庫化。海に覆われた惑星ソラリスの荒れた観測ステーションに到着するや否や、存在しない者に遭遇するところから始まる。外部から遮断された建物の中で怪異の存在が出現する恐怖は意外にも古いゴシック小説にも近い。一九六一年の発表以来、世界中の読者がこの作品を読んできた。その読み方はさまざまだろうが、読者に大きく依存し、むしろ『ソラリス』が読者を読んでいるのだ。最も愛する者が、同じ部屋にいても最も遠いところにいる最も理解の及ばない存在であることの悲しみと絶望の後には、もはやソラリス学者になるしかない。

《ソラリスD》=島村山寝氏

 ポーランド語原典の完訳が記念すべき2000番として文庫化。読む者誰しもが自身の問題をその中に見出すという意味で、世界文学のあらゆる古典と肩を並べる名作である。寓話でありながらリアリズムでもあるこの小説は、鏡・分身・愛と死など近代文学の主題を網羅しながら、ソラリスの海によるシミュレーションという設定がその全てを相対化し、仮想現実や科学的実在論といった最新の問題にも接続している。一方で古代以来の「汝自身を知れ」という命題も深く刻まれており、示される問いの奥行きと広さは比類ない。あらゆる時代の評価に耐えながら、同時に、昨夜彼女とケンカした(笑)という読者の心にも「刺さる」。色彩に満ちたソラリスの大気圏に主人公とともに突入するとき、誰もがその驚異を「体感」するだろう。訳者解説も必読。

《ソラリスE》=岡本俊弥氏

 本書は、これまで二度映画化されている。映画のテーマは明白で、アンドレイ・タルコフスキーはロシアの原風景をふんだんに鏤めた原罪と罰の物語を作り、スティーヴン・ソダバーグは悲劇的な愛と甦りのロマンスを物語とした。そして、作家レムは異質な知性=不完全な神とのコンタクト(接触)の物語を描いた。ポーランド語から直接翻訳された本書では、従来の欠落部分が補われ、テーマはより明瞭になったと思われる。しかしここには、超知性との接触、人の持つ罪と奥底に隠された罪悪感、失われた甘美な恋という、複数の物語が確かに並存している。しかも、知性と生理作用の相克、欠陥を持った神の寓話と読めば、先端SFと違和感なくつながる。レム自身にも語りつくせないこの重層性こそが、まさに本書の本質なのだ。

《ソラリスF》=大森望氏

 SF史上最大の天才が人類とは異質な知性を正面から描いた名作中の名作。本書によって、シリアスなSFに描かれる地球外知性のありようが一変。〝言葉の通じない外国人〟レベルの異質さだったエイリアンに、より根源的な意味で人間の理解を阻む可能性が示された。比類ない恐怖小説とも、動機探しのミステリとも、切ない悲恋物語とも読めるが、SF的な白眉は、旧版で大幅にカットされていた〝ソラリス学〟にまつわる蘊蓄。ものすごく真剣に構築された架空の学術体系は今読んでも最高にスリリングで、そのまま『完全な真空』につながる。旧版の通巻237番『ソラリスの陽のもとに』は、検閲で全体の一割弱が削除されたロシア語版からの重訳だったが、本書はポーランド語からの完訳版。親本は〇四年九月、国書刊行会刊。

※掲載順はランダム、投票期間中は匿名での公開とさせていただきました。

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コメント

HanShotFirst_jp “【校了直前】『ソラリス』解説文アンケートのお知らせ【決選投票】| #literature #magazine 2年以上前 replyretweetfavorite

Hayakawashobo ご投票いただいた皆様、ありがとうございました!現在、評者のお名前を公開しております。 2年以上前 replyretweetfavorite

Sad_Juno 不躾ながら独断で抽出した解説文の主題は次のとおり: A:SF / B:物語 / C:読者 / D:文学 / E:解釈 / F:作品 それぞれ重なりあう点があるのは当然として。 #ソラリス決選投票 https://t.co/lag3GucWIi 2年以上前 replyretweetfavorite

kamonegidrop ソラリス、ソラリス、ってなぜ今ごろソラリスで盛り上がっているのかと思ったら、ポーランド語からの完全翻訳版が出て解説文コンテストなんてやってたのか。しかも文庫だ。文庫で出てるんだ。 https://t.co/kZc4BGzkO5 http://t.co/XsF8DdgdTy 2年以上前 replyretweetfavorite