コンテンツ制作こそ、人工知能に取って代わられる?

川上量生さんの新刊『コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと』についてのインタビューシリーズ、最終回はプロデューサーの仕事についてうかがっていきます。2年間、ジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんと話し続けた川上さんは、「どうなるか知りたい」が原動力であることが、鈴木さんと自分の共通点だ、と語ります。また、プロデューサーよりも、ビッグデータのほうが正確にヒットを狙えるのではないか、という驚きの発言も。川上さんの描く、コンテンツ制作が人工知能に取って代わられる未来とは。

「『もののけ姫』を公開したら、どうなるのか知りたかった」

— 『コンテンツの秘密』を読んで、いろいろなことがわかったんですけど、ひとつだけ最後までよくわからなかったことがあるんです。それは、プロデューサーというのは何をすべき人なのか、ということ。

川上量生(以下、川上) 難しい質問ですね。

— 偉大な作品が生み出されるために、ジブリの鈴木敏夫さんがしていたことはなんだったのでしょう。例えば、監督から何か相談されるたびに「ふつうはこうです」と言う、という話がありましたよね。

川上 そうですね……鈴木敏夫さんは、やっぱり映画は監督のものだ、と思っている。プロデューサーが作品の内容に関与するのは、ある程度自制的でなければいけないと思っています。だから、ふつうのことを言うようにしてるんだと思います。自分の意見があって、それをもとに監督につくらせている、みたいになるのが嫌だ、と。鈴木さんがなぜそうしているかというのは……「傍観者でいたい」という、鈴木さんの生き方によるんじゃないでしょうか(笑)。

— プロデューサーとしてのものづくりの話ではなく(笑)。

川上 この前、鈴木さんと『もののけ姫』が公開されたときの話をしていたんですよ。あれは、完成した映画を見た時、映画業界の人の多くが大コケすると思っていたそうです。鈴木さん的には、「これはいけるんじゃないか」というなんとなくの勘はあったそうですけど、普通だったらヒットはしないだろうな、と思った。そこで、いろんな方法でプロモーションをして、蓋を開けてみれば当時の日本映画の興行記録を塗り替える大ヒットになったわけですよね。

— はい。

川上 で、結果的に大成功したとはいえ、ふつうに考えると難しいことはわかっていたはずで、なんでわざわざそんな道を行ったのかと聞いてみたいんですよね。だって、売ろうという目的でいるなら、もっと他の安全な選択肢があったんじゃないか、という話をしていて。例えば、ラピュタみたいな映画をまたつくるとかね。でも、あえて危険な方を選ぶという決断をどうしてしたのか。鈴木さんの答えは「どうなるか見たかった」、だった。

— それは、チャレンジ自体を?

川上 そう。全部実験なんだ、と言うんですよ。鈴木さんは、こういう難しい映画でもヒットするという仮説を持っていた。そして、その仮説が正しいかどうかを知りたかった。それだけ(笑)。

— すごくハイリスクな「知りたい」ですね(笑)。

川上 でもね、これ鈴木さんとぼくが一番似てる部分なんですよね。ぼくも好奇心だけですもん。だって、KADOKAWAとドワンゴの合併もなんでやったかって、この連載でも正直に答えてるけど、要するにどうなるか知りたかったから。

— どうなるんだろうと。

川上 マーケティング的に考えたら、「ニコニコ超会議」なんてイベントもやらないですよ。本当に儲けようとするなら、ニコニコ動画だって、別のやり方があった。でも、成功したいというより、やっぱりぼくは知りたかったんですよね。こっちの方向にみんな行かないけど、行ったらどうなるのかなって。

— 『コンテンツの秘密』にも、作者が展開を知らないままつくる作品はおもしろくなる、ってありましたね(笑)。

川上 そうそう、それがたまにうまくいくこともあるんです。

名作は、人から言われたものをつくったときに生まれる

— 川上さんは、プロデューサーとしてジブリでどんなことをやっていたんですか?

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Singulith >  川上量生の胸のうち|川上量生|cakes(ケイクス)   https://t.co/83THkWhGLz 3年以上前 replyretweetfavorite

PGraf ゆきひろ大先生も2chを開発した理由に、自由な場で人はどんな事を書くか知りたかったから、とか言ってたな。 →  4年以上前 replyretweetfavorite

shuntomeda マーケティングに対する考え方が近くて面白かった。 4年以上前 replyretweetfavorite