なでしこ10番・澤穂希が『生きるレジェンド』と呼ばれる本当の理由

ワールドカップの決勝という最高の舞台に、2大会連続で駒を進めた、サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」。そんな中、出場機会こそ減ったものの、「生きるレジェンド」として圧倒的な存在感を示しているのが、澤穂希、その人です。彼女が「生きるレジェンド」と呼ばれる本当の理由と、サッカー人生のハイライトを迎えようとしている彼女の想いを、なでしこ取材の第一人者・江橋よしのり氏に、現地からレポートしてもらいました。

 前回大会の優勝から4年。サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」は、舞台をカナダに移した2015年のW杯でも、世界から喝采を浴びている。準決勝のイングランド戦前にも、地元メディアはこう報じていた。 「日本は世界で最も技術に優れたチームだ。イングランドは、チーム史上最高のプレーを披露しない限り、日本に勝つのは難しいだろう」 。その予言の通り、日本は2―1で勝利し、2大会連続の決勝の舞台に駒を進めた。

 このチームの中心に、澤穂希がいる。W杯6大会連続出場は、男女を通じて世界初。もはやなでしこジャパンの顔というだけでなく、女子サッカー界の「生きるレジェンド」となった彼女を、各国メディアは連日大きく報じている。

 さすがに走力は4年前と同等というわけにはいかない。カメルーン戦ではW杯で20年ぶりに先発落ちも経験した。この大会で澤に与えられた役割は、不動のレギュラーではなく、「試合を締めくくる選手」だ。

 なでしこジャパンがリードして終盤を迎えると、佐々木則夫監督は澤をピッチに送り込む。彼女が登場することで、チームメイトはたとえ体が疲れていても、「澤さんと一緒にもうひと踏ん張りするんだ」と、気持ちのスイッチを入れ直す。澤の名前が場内にコールされると、スタジアムは拍手に包まれ、彼女の一挙一動に歓声がこだまする。対戦相手にしてみれば、会場中が日本の味方をしているように感じられ、戦意を喪失してしまうにちがいない。やはり澤は、なでしこジャパンに欠かせない存在なのだ。

 試合だけではない。喜びも、悔しさも、サッカーの楽しさも怖さも、すべてを知る澤という選手と毎日練習や生活をともにすることは、なでしこジャパンの各選手にとって貴重な財産となる。
 カナダ入り後のある日の練習では、こんなことがあった。

 前日に試合を行ったなでしこジャパンは、先発メンバーが室内トレーニング場での調整にとどまり、途中出場選手と試合に出なかった選手がグラウンドに出て本格的なトレーニングをすることになった。澤は若手とともにグランドに出て、5人対5人のミニゲームで体を温める。そのミニゲームで、相手のきわどいボールに対し、澤は懸命に足を投げ出してスライディングでパスをカットしてみせた。控え組の練習の、しかもウォーミングアップでさえも、「グラウンドでは一瞬でも気を抜いてはいけない」というメッセージを、澤はたったひとつのプレーで全員に伝える。

「なでしこたちは、まだまだ彼女の背中を見て学ぶことがある」
 佐々木監督もそう言って、目を細める。

 澤は、そんな自身の思考や習慣を、『夢をかなえる。』という一冊の本にまとめている。かつてW杯で、アメリカやドイツにまったく歯が立たなかったころから「いつか世界一になる」という夢を追い続けた澤は、本書の中で、夢をかなえるプロセスをレンガづくりの階段になぞらえている。

—夢のレンガとは、自分の足元に自分で積み上げるものです。自分が立っている地面に、一日一段、レンガを積むんです。翌日は、その自分で積んだレンガの上に立って、また一段、新しいレンガを積むんです。そうして一段ずつ積み上げていけば、ずっと先にある夢は「高い壁」ではなくて、「階段」になっているはずです。壁は一気に乗り越えられなくても、階段だったら上れそうだと思いませんか?—(本文より)

 コツコツと夢のレンガを積み上げ、世界の頂点に立ち、今なお自分を高めようと努力する彼女の言葉は、ジャンルを超えて多くの人に生き方のヒントを与える。夢を持ち、「なりたい自分」の姿を強く思い描くすべての人を、希望の光で照らす。

 本書で語られる澤の教えは、どれも平易な言葉で語られる。

「プラスの感性を磨く」 「夢を恥ずかしがらない」 「コンプレックスは無理に克服しない」 「加齢を楽しむ」 「泣いてもいい、だけど逃げない」 「成功はあとから実感すればいい」 「毎日、夢のレンガを積む」

 特別な才能はいらないよ。心がけひとつで誰にでもできるんだよ。彼女が私たち一人ひとりにそう語りかけ、そっと背中を押してくれるかのようだ。

 この本の読み方は、読者にとって自由だ。1ページ目から順番に読んでもいいし、目次を眺めて気になったところから読みはじめてもいい。読み終えた後も手元に置いて、自分を励ましたい時に繰り返し読むのもいい。または教会で牧師が聖書を朗読するように、1日1項目、パッと開いたページを読んで、その日の教訓とするのもいい。

 夢に向かって生きる澤穂希が「最後のW杯」と公言するカナダ大会が、間もなくフィナーレを迎える。

(テキスト 江橋よしのり)

澤穂希さんが書かれた『夢をかなえる。思いを実現させるの64のアプローチ』をcakes限定公開!
【第1回】最後のW杯で「背中を見せ続けた」澤の原点

なでしこジャパンの「生きるレジェンド」が綴った「夢の持ち方、かなえ方」

この連載について

夢をかなえる。

澤穂希

―夢は見るものではなくかなえるもの―。中学生の時から、この言葉を大切にしてきた澤穂希が、アスリートとして、ひとりの女性として、夢の持ち方&かなえ方を紹介しているのが『夢をかなえる。』です。仕事、生活、仲間、恋愛、結婚、子ども、家族、お...もっと読む

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コメント

riyonmosa 夢のレンガを積もう!◆ 約4年前 replyretweetfavorite

sizukanarudon なでしこ10番・澤穂希が『生きるレジェンド』と呼ばれる理由 https://t.co/qJTyeZogbd プラスの感性を磨く 夢を恥ずかしがらない コンプレックスは無理に克服しない 加齢を楽しむ 泣いてもいい、だけど逃げない 成功はあとから実感すればいい 毎日、夢のレンガを積む 約4年前 replyretweetfavorite

ktashiro この中で自分が実践できてるのは「加齢を楽しむ」だけかも。> 約4年前 replyretweetfavorite