55歳女子の婚活 Vol.02~女の市場価値がリーマンショック並みに暴落していたことに気づき落ち込む

55歳・バツ2オンナのガチンコ婚活記---二人の子どもを生き甲斐に、女手一つで来たけれど、やっぱり寂しい時もある。自分の殻を脱ぎ捨てて、不安も羞恥も乗り越えて、咲かせてみたいわ愛の花。だけど恋って難しい。私は臆病ものだから――。

「恋よふたたび」
55歳・バツ2オンナのガチンコ婚活記(その2)

(文・黒川祥子/ジャーナリスト)


あしたのために 2―漁場を間違えるな

「うわお! 面白い、絶対、面白いよ、これ! アドバイザーとして適任かどうかはわかりませんが、ひと肌もふた肌も脱ぎますってば」

快く、私の婚活アドバイザーになってくださった、新潮社の中瀬ゆかりさんは(講談社の企画であるにもかかわらず)寛大にもこう言った。

「モテないって嘆いているのって、要するに“漁場”を間違えているんだよね。それって、自分がエサにならないところを泳いでるんだよ。自分のことを、好物だという魚がいるところを泳がないと・・・・・・。間違っても、30代女子のところに並んじゃダメなの」

髪をサイドでお団子にまとめ、イヤリングにマニキュアと中瀬さんの女子力はかなり高い。かつて相当にモテたと噂で聞いた。さすがだなーと見ほれてしまう。

中瀬さんは〈50代女・婚活の鉄則〉を、ずばりと射抜いた。

「とにかく、漁場を間違えてはいけないってこと。自分たちの漁場で、正しく活動する。漁場がなければ、作ればいい。エサを撒いておびき寄せればいい」

さすがだ。うなってしまう。

中瀬さんはさらに、こうも言った。

「モテる、モテないって多数決の問題じゃなく、最終的には、たった1人からディープにモテるかなんだから、共産党みたいな女子を目指せばいいんだよ。大多数の男から引かれても、コアに常に支持されているという」

共産党女子、思いもしなかった!

「だから逆に、大票田で勝負する自民党女子になっちゃダメってことだよね。与党になる必要はないけど、手堅く議席を守るという・・・・・・。若い時なら自民党女子でイケイケだったけど、50女に大票田は、残酷だけど、もう、そんなの無理なんだから」

まさに! 私は既に、漁場を間違え、手ひどい目に遭っていた。

初冬の青空が輝いていた。日曜の昼下がりに私が六本木にいること自体、普段の生活からかけ離れ、どうにも現実味がなかった。

かつて書籍の企画で「熟年婚」の取材を始めた時はまだ余裕のアラフォーだったのに、今はとっくに該当年齢。これまで「取材者」という立場で、「お見合いパーティー」を高みの見物していたが、ついに一参加者という「当事者」に、自分がなるのだ。

再婚活パーティーへの参加自体、自ら積極的に打って出たわけではない。取材で知り合った離婚カウンセラーに「婚活を始めた」と伝えたところ、自身が主催する「バツイチ再婚活パーティー」を勧められたわけで、つまり、背中を押されての行動だった。

「黒川さんも出てみれば。だけど黒川さん、歳、いくつだっけ?」

正直に答えたところ、離婚カウンセラーが言葉に詰まった。

「・・・・・・黒川さん、自分が50いくつだって、絶対に言っちゃダメだよ。もっとも、他の人も年齢を言うのはナシなんだけど」

この時のはるかな「間」に、気づくべきだったのだ。

パーティーの参加資格は、バツイチ以上であること。これまで取材で何度となく見てきたお見合いパーティーは、食事の後に一対一で5分ずつのお見合い タイムが設けられ、漏れなく全員と自己紹介をし、最後に意中の人を書いた紙を主催者に渡す。ここで「マッチ」した男女が、交際をスタートさせるというもの だった。

おそらく、今日もそういうシステムなのだろう。しかし既に私は、会場に向かう前に絶望していた。駅のトイレで勇気を持って直視した自分の姿に・・・・・・。

久しぶりに、男性の視線を浴びる機会だ。意識しないわけがない。友人から「似合うよ」とほめられたグレーのワンピースをチョイスし、普段より念入り に化粧をして、イヤリングまでつけたというのに・・・・・・、鏡に映る私は、なんてくすんでいるのだろう。“男ナシ16年”という穴倉から地上に出れば、 目を覆いたくなる惨状が待っていた。そうだよ、トイレの鏡で自分を直視できなくなって、もうずいぶんになるんだもん。

「何だよ、これ。なんだってこんなに色みや華やかさがなくて地味なのぉぉぉ」

これまで避けてきたこと、知りたくなかったこと。ああ、何を、どうやっても手遅れ。本日、打つ手ナシ。もう、いい、それほど飢えてるわけじゃないし―この期に及んで、まだどこかへ、自分を逃がそうとしていた。

薄暗いパブのような店。番号が付いた名札を渡され、「女九番」の席に座る。女性は壁側、男性はその向かい側。1つのテーブルに女性が3人並んで座 る。これがライバルであり、チームだと主催者が説明する。私のチームの女性は、2人とも30代の真ん中ぐらい。ほっそりとして小柄、きれいに化粧して、華 やかで美しい。今思えば、私はこの時点で逃げ帰るべきだった。

食事&おしゃべりタイムはなく、最初からお見合い=自己紹介が始まる。女性は動かず、男性チームが3人ずつ、どんどん入れ替わっていく。

会費6500円で、フリードリンク。酒が入ると多分壊れるから、飲み物はウーロン茶にした。テーブルに料理が運ばれてくる。口にしたのはカレー味の ピザ一切れ、スモークサーモン三切れ、明太マヨディップで大根とキュウリと人参の野菜スティックを二本ずつ。6500円で、たったこれだけ。やっぱり、お 昼を食べてくるべきだった。

自分のことを職業や家族構成以外で紹介するって、難しい。一体、何が残るんだろう、仕事と酒しかなくない? 趣味だってヨガに街や山歩きとか。ああ~、何てつまらない女なんだろう。チームのメンバーはドラムにサンバとやっぱり、ちゃんと華がある。

しょうがないので仕事で居酒屋探訪の記事を書いたとか、そんな情報を小出しにして場を盛り上げる。おまえは、ピエロ? これがチームの女子には大受けで、今度、飲みに行きたいと最後に言われた。違うのよ、目的が。

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