「自分の頭で考え、自分の言葉で、自分の意見を述べる」ために
17世紀の哲学者、パスカルが、著書『パンセ』の中で、
「人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものにすぎない。だが、それは考える葦である」(参照:『世界の名著 第24 パスカル』 前田陽一 由木康・訳 中央公論社)
と述べているように、人間は思考を行うからこそ偉大であり、人間の尊厳のすべては、考えることの中にあると思います。
人間の人間たる所以は、自分の頭で考えることです。「自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を述べること」が何よりも重要です。これこそが、すべての教育や学習の最終目標です。
たとえば、気になる異性に「つき合ってください」と言うのか、言わないのか。おもしろそうな仕事があったときに「自分にやらせてください」と言うのか、言わないのか。日々、自分の頭で考えて次々と選択(対応)をしていくのが、人間の人生です。
人間が、この社会でより良い生活を送るためには、この日々の選択を少しでも正しいものにするために、自助努力(勉強)が必要です。日々の選択の判断材料となるのが、「教養」です。
・教育……生きていくために必要な最低限の武器を与えること
・教養……より良い生活を送るために、思考の材料となる情報を身に付けること
ストックしてある知識や情報の量が多ければ多いほど、思考や直感など脳の活動の精度は高くなります。だから私たちは、たくさんの教養を身に付けておく必要があるのです。
「知」は、それだけで力になる
ライフネット生命のオフィスの近くに、「ソラノイロ」というラーメン屋さんがあります。私の行きつけの一軒です。このお店の店主、宮崎千尋さんは、高校時代にラーメンの食べ歩きをしたことがきっかけで、ラーメン職人を志しました。
このお店で特出しているのが、女性客への対応ではないでしょうか。
宮崎さんの、「女性でも、ひとりで安心してラーメンを食べられるようなお店をつくりたい」との思いから、メニューにも、設えにも、女性の心をつかもうとする意欲がうかがえます。
「ベジソバ」は、日本で初めて、麺・スープ・トッピングすべてに野菜を使ったヘルシーなラーメンです。スープには、豚・鶏・魚に、ムール貝の塩ダレとニンジンのグラッセピュレを混ぜてあるそうです。
宮崎さんが「ベジソバ」を創作できたのは、食材やラーメンに関する教養(情報)をたくさん持っていたからです。
ムール貝を食べたことのない人や、グラッセピュレを知らない人には、「ベジソバ」を思いつくことはできません。
「豚+鶏+魚+ムール貝+ニンジン」という組み合わせを思いついたことで、日本初のラーメンをつくることができたのです。頭の中にたくさんの情報がなければ、いくら考えても、良いアイデアは生まれてきません。
知は、それだけで力になります。新しいアイデアは、教養を持つ人からのみ、生まれてくるのではないでしょうか。
大切なのは「読書量」よりも、精神のあり方
私が活字中毒者であることを知る人から、たびたび「教養のある社会人になるには、何冊ぐらい本を読んだらいいですか?」と、聞かれることがあります。
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