自分を「ロボット化」することがやせるコツ
—— 前回は、意志の力というのは、まったくダイエットのあてにならないということを話してくださいました。『最後のダイエット』では、その解決策がくわしく書かれていますね。
石川善樹(以下、石川) はい。体重の増減は、生活習慣の積み重ねで決まります。なので、結局のところ、新しい生活習慣を身につけるしかないんです。
—— 「やせたままでいる習慣」を身につけるには、どうしたらいいんですか?
石川 いかに自分をロボット化していくか、つまり習慣のベルトコンベアの上に乗せていくかということが重要です。 いちいち意志決定をしなくてもいいように、ルール化することです。たとえば、「お腹が空いた状態で買い物をしない」というルールを作ったとします。
—— お腹が減っていると、無駄な食べ物を買ってしまいますよね。
石川 そうです。ですから、簡単に食べられるような非常食を常に持ち歩いて、お腹が減っているときは、お店に入る前にそれを食べるようにする。すると、空腹のあまりスナック菓子などをたくさん買うような事態は防げます。
—— なるほど。しんどい状況でいちいち意志決定しないでも済みますもんね。
石川 そのルールをなじませるのが「習慣化」ということです。繰り返しになりますが、ダイエットで一番大事なのは、やせた後にリバンドせずに体重をキープすることのはずです。
—— ええ。
石川 食事制限だけでやせると、筋肉が減ってしまいます。すると基礎代謝が下がってしまって、太りやすくなってしまう。ダイエットの成功を、ある時点を切り取った〝瞬間の〟数字で計ると、そのようなことが起こってしまいます。
—— そうではなくて、あくまで「やせたままでいる習慣」が大事なのだと。
石川 ですから、まずは簡単な習慣を2か月くらい試してみる。そういう期間がないと、減量しても結局もとの生活習慣に戻ってしまって、リバウンドを起こしてしまうことになります。
太っている人は部屋が汚く、カバンも重い
—— 「習慣」の大切さが、だんだんわかってきました。
石川 「やせたままでいる習慣」を身につける自信がないなら、筋肉量をいたずらに減らすだけで、絶対にリバウンドしてしまうので、初めからダイエットなんてしないほうがいいとすら言えます。その結果、ダイエットをするたびに体重が増えるという矛盾に陥ってしまうわけです。
—— この話、すごいですよね。ダイエットをすればするほど太る、という。
石川 あと、太っている人に話を聞くと、みんな太るための習慣を積み重ねているんです。
—— どういうことですか?
石川 やっぱり「楽」についてはみんな追求していますね。たとえば、渋谷のスペイン坂という坂にインテリアショップがあります。そこの中を通ると、エスカレーターで坂の上までいけて楽なんです。それを知り合いの太っている人に教えてもらいました(笑)。
—— それ、知らなかった!
石川 他にも「乗り換えのためには、この車両が一番いい」など、電車を効率的に乗りこなすのがうまかったりします。あと、カバンが重い人も多いです。細かく出し入れしたりするのが嫌いなんですね。
—— カバンが重いとエネルギー消費しそうですが。
石川 そうするとカフェに寄って、甘いものを食べるんです。彼らは、どうすれば自分が楽に過ごせるかということをよく知っているんです。
—— 太っている人は、エネルギーを温存するのがうまいと。
石川 ある意味、無駄を省いて効率よく動く習慣に長けているんです。
—— おもしろいなあ。生活習慣の結果として体型があるんですね。
ダメと言われると絶対にやりたくなる脳
石川 それと、ダイエットには「我慢」が必要だと思われてますよね。でも、人間は禁止されたことをやりたくなる性質があるんです。
—— ああ、「絶対押すなよ!」って言われたら押したくなりますよね(笑)。でもそれって、科学的に確認されてる話なんですか。