やせたままでいるための「数式」
—— 前回はダイエットの問題設定が「やせるには?」ではなく「やせたままでいるには?」という、新しい命題に気づいたというお話でした。ということで、やせたままでいるにはどうしたらいいのかを、教えていただけますか?
石川善樹(以下、石川) これが実は、その人ごとに条件が違うんですよ。なぜかというと、性別、年齢、身長、体重、生活など、人によってすべての条件が違っているからです。その方程式を解くために、すごく難しい計算をする必要がありました。
—— 数式ですか!
石川 はい。様々な条件を考慮した連立微分方程式という数式を立てて、それを解いたんです。そのために、京大の数学科出身の三澤君(三澤大太郎)、東大でデータサイエンスを研究していた風間君(風間正弘)をリクルートして、半年かけて一緒に計算しました。
—— 半年も! それがいつのことですか?
石川 去年、2014年ですね。そもそも、2011年に、最初にリバウンドについての論文を発表したのが、アメリカのケヴィン・ホールさんという研究者です。数学者である彼が、最初にこの数式を解いたんです。
—— 2011年までそういった理論はなかったんですか?
石川 そうです。1㎏分の脂肪を減らそうと思ったら、7000キロカロリーを減らさなければいけないという数字はよく知られていたんですが、1kg体重を減らして、それを維持するにはどうしたらいいかは、ケビン・ホールさんが解明するまで誰もわからなかったんですよ。
—— 最近の話なんですね。
石川 僕はその論文を見て、これはすごいぞと思いました。そして、その理論を検証したんですが、ケビンさんの解き方がすこし間違っていたんですよね。
—— え? そんなことってあるんですか(笑)?
石川 そうなんですよ。連立微分方程式というのはすごく難しくて、ほとんど一般解を導けないんですよ。だから、近似しないといけないんですが、ケビンさんはその近似の仕方が適切ではなかったんです。ちょっとホワイトボードをお借りしてもいいですか?
数式についてしばらく講義
—— 解説ありがとうございました。で、今回の本は減量や体重維持をするためのカロリー目標がウェブサイトの「減量シミュレーター」でわかるんですが、この数式が裏側で使われているということなんですね。だから、わからなくても大丈夫という。
減量シミュレーター(PC・スマホからアクセスできます)
石川 そうです。今の状態と目標をいれるだけで、やせた後の維持期のカロリー目標がわかるんです。
—— これ、すごく簡単につかえますけど、かなり画期的なことだったんですね。
石川 彼の論文に掲載された方程式を修正して、より確かなものにした論文を近々発表します。
—— 楽しみです。
現代人は意志の力が減っている
—— ただ、カロリー量がわかっても、減量とか節制をするにはキツくて苦しいことばかりですよね。食べ物を減らすとか、運動をするとか。そのことも失敗する原因の一つだと思うのですが。
石川 そうなんです。そして、さらに残念なお知らせなのですが、現代人は意志力が弱まっていると言われています。
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