前編】人類は「何をしたらやせるのか」という問いを追いかけすぎた

なぜ人類の8割以上がダイエットに失敗し続けるのか。予防医学研究者である石川善樹さんが、ダイエットに挑むことになったのかを聞きました。そもそもダイエットの歴史は古く、古代ローマから今でも基本は変わっていないそうです。しかし、未だに失敗し続けるとういことは、人類は大きな過ちを犯していたのかもしれない――史上最大の難問を、石川さんはついに解き明かしたのでした。
cakesでも特別掲載中の「最後のダイエット」も併せてお楽しみください。

世界初のダイエット理論の誕生

— cakes責任編集の『最後のダイエット』がとうとう刊行ということで、今日は著者の石川善樹さんにお話をうかがいます。そもそもこの本は、石川さんと僕(加藤)との雑談からはじまってるんですよね。

石川善樹(以下、石川) そうでしたね。ぼくがダイエットがこれまでいかに誤解されてきているのかという話を加藤さんにしたら、それをおもしろがっていただいて。

— 本当におもしろくてびっくりしたんですよ。だって、「ダイエットをすればするほど太る」とか、いままでに聞いたことがない話ですから。今日は、本書についていろいろお話をうかがわせてください。

石川 はい。この本の中身は、個人的に「ダイエットの最終理論」と呼んでるんですよ。

— かっこいいですね。なぜ最終理論なんですか?

石川 それをお話するには、ダイエットの簡単な歴史の話からさせてください。そもそも「最初のダイエット」は、古代ローマの医学者・ガレノスというひとが唱えているんです。

— そこまでさかのぼるんですね(笑)。

石川 はい。実はダイエットに関係する論文をそうとうたくさん読んだのですが、医学だけではなく、生理学、脳科学、心理学など、あらゆる分野の研究が関係してきて、難問だということがわかりました。
 そこで初心にかえって、まずはダイエットの歴史をどこまで遡れるのかなと調べたんです。

— それが古代ローマですか。さすがです。

石川 当時、この方法ですぐにやせられると大評判だったそうです。まあ、言ってみれば古代ローマのライザップですね(笑)。

— あ、その人は自分がやせたんじゃなくて、その方法を広めた人なんですか?

石川 そうです。ガノレスさんはめちゃくちゃ有名な医学者なんですよ。

— へええ。どんなダイエット方法だったんでしょうか。

石川 彼が言っていたのは、「運動しろ」「風呂で汗を流せ」「健康にいいものを食べろ」の三つです。僕は愕然としました。

— おお! いまとあんまり変わらない!

石川 そう、「運動」「休養」「栄養」がそろっている。ほぼ完璧なんです(笑)。すでに古代ローマ時代に、ダイエットのほとんどがわかっている。その後も、糖質をカットするのがいいとか、いやカロリーが問題だとかマイナーチェンジはあるものの、この基本の考え方はいまも変わっていません。

— でも、みんな、なかなかうまくいかないですよね。

石川 そうです。数値にすると、未だに80%から98%の人がダイエットに失敗します。失敗率が異常に高いのがダイエットの特徴です。
 これだけ多くの人が失敗しているということは、ダイエットに関して何かが根本的に間違っているということを意味しています。それに2000年ものあいだ、人類はずっと気づいてこなかったんです。

— 壮大な話になってきました。

石川 科学者という人種は、うまくいっていないときは根本の原理にさかのぼって考えます。
 ダイエットの根本原理がなんだろうと考えると、それは、「体重は摂取エネルギーと消費エネルギーのギャップで決まる」ということなんです。

— はい。

石川 つまり、食事などでとるエネルギーより、使うエネルギーが多ければやせるということです。

— そりゃそうですよね。

石川 そうなんです、それ自体は間違っていません。しかし、その理屈で多くの人がダイエットに失敗しています。なので、僕が考えなおしたのは、「人は何をしたらやせるのか」という問いを追い求め過ぎたのではないかということです。

— つまり、問いの設定自体が間違っているのではないかと。

石川 そう、問題設定がおかしい。だから失敗していたんです。本当に必要なのは、「やせたままでいるにはどうしたらいいのか」という問いです。

— なるほど。ある一時点の話ではなく、時間軸を持った話だと。

石川 そうです。そのための理論がまだないなと。あの、ここで「理論とはなにか」という話を簡単にしてもいいですか?

— ええ(笑)。よろしくお願いします。

石川 理論というものが権威、つまり信用を得るには、定量的に予測できないといけないんです。
 つまり「相対性理論」は理論なんですけれど、「ダーウィンの進化論」は理論ではないんです。

— ほほう。

石川 「ダーウィンの進化論」は単に進化にはパターンがありそうだという話です。これが理論になるには、「これから1万年先に何種類ぐらい生物は進化するか」という問いに答えられないといけないんです。

— なるほど、だから理論ではないのか。

石川 ダイエットについても、「体重を維持するには何キロカロリー減らした生活をすればいいんですか?」という問いに答える理論がなかったんです。

— 確かにこれだけダイエットの本や企画が出回っているのに、それは見たことがないですね。

石川 「やせたままでいる」、つまり「やせてリバウンドしない」ことがゴールの話なのに、手前の「やせる」ことにとらわれ過ぎちゃって、そのための理論がなかったんですよ! 気づいた時に僕はめちゃめちゃ興奮したんです!

— 研究者はそういうところに興奮するんですね(笑)。

石川 そうなんです。だから、ダイエットは、本当は一度成功したらもうしなくていいものなんです。「一度、5kgやせたことがあるから大丈夫!」なんて、宣言をしているのは、そもそも間違っているんですよね。

— 「禁煙なんて簡単だよ。何百回もしたことがある」というジョークがありますが、それといっしょですね。

石川 はい。「やせること」までが目的じゃなくて、「やせたままでいる」ことが目的ですからね。今までの目標設定が間違っていたというわけです。


次回「貧乏だと太る?意志の力が弱い現代人」は6/8(月)更新予定。

聞き手:加藤貞顕 構成:宮崎智之


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第1章 なぜダイエットはこんなに難しいのか?
第2章 ハーバード式・究極のダイエット理論
第3章 モチベーションゼロで成功率100%のコツを学ぶ
第4章 ダイエットについてのQ&A

この連載について

本当のダイエットは体重ではなく人生が変わる—石川善樹インタビュー

石川善樹

なぜ人類の8割以上がダイエットに失敗し続けるのか。予防医学研究者である石川善樹さんが、ダイエットに挑むことになったのかを聞きました。そもそもダイエットの歴史は古く、古代ローマから今でも基本は変わっていないそうです。しかし、未だに失敗し...もっと読む

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コメント

Zenkouyoga これはヨガスタジオでも多い質問。 8ヶ月前 replyretweetfavorite

miyayou 人類は「何をしたらやせるのか」という問いを追いかけすぎた | 8ヶ月前 replyretweetfavorite

shimodakohei 人類は「何をしたらやせるのか」という問いを追いかけすぎた | 3年以上前 replyretweetfavorite

ora109pon 人類は「何をしたらやせるのか」という問いを追いかけすぎた | 3年以上前 replyretweetfavorite