「書きかけのサザエさんをなんとかして熊切あさ美に切り替えて」
この連載の編集担当から来た、次回扱う人材の候補メールに返信しそびれていると、今度は「サザエさんでどうでしょう?」とピンポイントなメールが来たので、「じゃあサザエさんで」と取り急ぎ答えておく。しかし、いざ書き始めようとしても、日本を代表する平穏なコンテンツに今さら言及することなどなく、「申し訳ないのですが、イラストレーターさんに、書きかけのサザエさんをなんとかして熊切あさ美に切り替えてもらってください」と返そうとする時になって、メール文に「サザエさん(パート問題、現実感のない主婦像について)」と添えられていたことに気付く。
なんと、4月末の放送回で、専業主婦のサザエさんがスーパーに働きに出たという。大賑わいの店頭販売で奮闘するなど早速お店に貢献したサザエさんだったが、たったの2日でパートを辞めてしまう。タラちゃんがサザエさんの帰宅が遅いことに対し不満を漏らし、サザエさんは「子どもが寂しそう」「体力をつけてから」という理由でパートを辞したのだ。専業主婦家庭よりも共働き家庭のほうが多い現在、サザエさんの生半可な姿勢を糾弾する声が相次いだという。
サザエさんと労働者派遣法改正
反対派の主張は「いくらアニメだとはいえ、働く女性の現実を知らなさすぎるのでは」「一人きりになるわけではないのだし、タラちゃんも寂しいのをガマンできるはず」「まだ24歳なんだから体力はあるだろう」といった現実的な指摘。容認派の主張は「そもそも戦後すぐに始まった作品に、現代社会のリアリティを求めるな」「各家庭の事情があり、磯野家は辞めても大丈夫な環境なのだから問題ない」という、これまた現実的な指摘。
こういう時にドヤ顔で投じられる「所詮、アニメじゃん」という冷静沈着な見解ほどつまらないものはないので、こちらも議論に参戦することとしよう。反対派・容認派とはまた異なる主張だ。政界では連日のように安全保障法制が議論されているが、その盛り上がりの中をすり抜けるように進んでいるのが労働者派遣法の改正だ。これまで3年が上限となっていた派遣労働者の受け入れ期間の制限を事実上無くす改正により、正社員の仕事を派遣労働者に代替させる動きが強まり、派遣労働者は一生涯ずっと派遣労働者として固定される可能性が高まることが懸念されている。
「7〜8割の人は派遣を希望している」と竹中平蔵氏
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