担当編集者の太鼓判!
本書は月刊誌「EX大衆」にて連載していたものをまとめたものです。連載取材では、土田さんのお話に毎回お約束のような「へ~!」「なるほど!」の相槌オンパレード。そうです、“納得”させられていたのは、紛れもなく担当編集者の私だったのです。そのたびに土田さんはニヤリと笑っておりました……。きっと、読めばその気持ちが分かります。上司、取引先相手、奥さん、友達など、納得させたい相手が思い浮かぶ方、必読です!!
(双葉社 市村阿理)
実はすごく偏屈な性格かもしれない
—— テレビを観ている土田さんは、家電やガンダムなど、好きなことはものすごく突き詰めてらっしゃるじゃないですか? だから、いろんなことを気にする方なんじゃないかというイメージがあったんですが、この本を読んでいて、「土田さんはあまりこだわらない性格なんだなぁ」とちょっと意外でした。
土田晃之(以下、土田) 「こだわらないということ」にすごくこだわってるんですけどね。だからすごく偏っているんですよ。
—— そういう性格はいつ頃からできあがったんでしょうか?
土田 子どものときからずっとじゃないですか? ずっと偏屈だったとは思うし。負けず嫌いだったんでしょうね。自分では「負けず嫌いじゃない」と思っていたんですけど、やっぱりどこか負けず嫌いだったんだろうな、といま振り返って思います。
—— 口喧嘩とか強そうですね。
土田 そうですね。子供同士ってくだらないことで言いがかりつけては、ケンカになりますからね。いまだに、自分の子供が学校で嫌なこと言われたりしたら、それに対して「そんなこと言われたら、そんな子供っぽいこと言ってる相手の悪口のセンスのなさを攻撃すればいいじゃん」って、切り返し方を教えたりするんです。昔から、僕はすごく人の揚げ足を取るというか、人を詰めるのがとても得意でしたからね。
—— じゃあ、子供の頃からあまり性格が変わっていないんですね。
土田 ほら、世の中って交渉事が本当に多いじゃないですか? 恋愛でも仕事でも、なんでも交渉ですよね。でも、そんな交渉事をとりあえず有利に進めるには、相手を「詰めること」が大事なんですよね。それは、僕がこれまで生きてきて学んだことだと思います。
人を「詰めるとき」には、証拠を3つ押さえろ!
—— この本にも、いかに議論している相手を追い詰めていくか……という「人の詰め方」がレクチャーされていますよね。普通、「人の詰め方」って悩み相談本には載ってないなと思って、「斬新だな」と思いました。
土田 人の詰め方にもいろいろあるんですけど、大事なのは証拠を集めることなんですよ。この間先輩の家で、仲間たちでバーベキューをやったんですよ。そのときも、とある共通の知人のことで、みんなの愚痴が止まらなくなることがあって。そいつが本当にダメなやつで、みんな何度も迷惑をかけられている。だから、「あいつ、なんで何度も同じことを言っても、同じミスを繰り返すんだ!」……と。そのときに、僕も「土田さん、どう思います?」と聞かれたんですよ。
土田 まずは証拠を整理しろ、と。これだけみんながいろいろ愚痴を言うならば、「その人が他人に迷惑をかけている」という証拠がいろいろあるはずですよね。それを、1個1個整理して集めていけば、いくらでも戦えるんじゃないかと。
—— 「戦う」ですか? 単なる愚痴から、かなり実践的な話に飛んでますね。
土田 正直、陰口なんて言ったってしょうがないんですよ。なにも状況は変わらないから。だから、「これは直接相手を詰めないと意味ないから。そいつに顔が効くエラい人の前で、詰めていけばいいんだよ。エラい人を呼ぶのはオレがやるから、あとはみんながいろいろ証拠を押さえてくればいい」と言いました。
—— 怖い……。本にも「相手を詰めるときは、証拠は3つ押さえろ」というくだりがありましたね。
土田 そうですね。本でしゃべったのは、多分「浮気の詰め方」だったと思うんですけど、浮気の場合は3つ証拠があればOKなんです。あと、相手の非がわかる証拠を先方に突きつけていくことで、どんどん相手を追い詰めていくわけなんですけれども、証拠を出す順番にもいろいろあるんですよ。
まず、みんな最初に有利になりたいから、一番影響力のありそうな動かぬ証拠から出してしまいがちなんですけど、それはダメなんです。
—— 最初からぐうの音もでないように、一番強いカードを出してしまったほうがいいような気がしますが。
土田 いや、一番大きいカードが仮に突破されてしまったら、こちらが不利になりますから。だから、本当は一番影響力の小さそうな証拠から出していかなきゃダメなんです。まず、最初に小さい証拠から出していく。そして、仮にそれを突破して相手が「よし、かわした!」と安堵しているときに、もっと強いカードを出していくんです。そうすると、精神的なダメージがでかいんですよ。浮気の場合は、3つぐらい動かぬ証拠があれば、だいたい相手はオチますよね。
—— 戦略家ですね……。土田さん、政治家になれるんじゃないですか。
土田 あれ、政治家ってそういう仕事なんですか?(笑)。
—— 感情に訴えるのではなくて、理論で徹底的に攻める……というのが、土田さんのスタイルなんですね。
土田 そうですね。芸人に憧れていた頃、僕が好きだったのが上岡龍太郎さんと島田紳助さんなんです。読売テレビで毎週火曜に放送していた『EXテレビ』にお二人が出演されていたんですが、それがすごく好きで。そこで、「自分は、ああいう理屈っぽいのが好きなんだな」と気づきました。その頃から、「自分もああいう風になりたいな」と思っていたんでしょうね。多分、その辺の僕の偏屈な部分が、この本には出ているんじゃないですか? テレビでそんなの出してもお金にならないんで出さないですけど(笑)。
先輩に誘われたって、行きたくないときは行かない
—— 土田さんみたいに割りきった生き方ができると、すごく人生が楽になりそうな気がします。
土田 まぁ、僕にとってはこれが普通なんで、ほかの人に比べてどうかはわからないですけど。ただ、楽なことは多いんじゃないですかね? たとえば、八方美人な人とか見ると「大変だな」って思いますよ。僕は全然八方美人じゃないから、先輩に飲みに誘われたとしても気分が乗らなければ行かないんです。
—— 大物の先輩に誘われたりして、「断れない!」みたいなシチュエーションでも行かないんですか?
土田 行かないですね。どんなに大好きな先輩でも、行きたくないときは行きません。たとえば、以前もダチョウ倶楽部の上島竜兵さんに「飲みませんか?」と電話したとき、「いま○○さん(大先輩)と一緒にいるから無理」と言われて。そこで、「じゃあ、また今度で」と言ったら、その大先輩が電話を代わって「なんだ、お前オレとは飲みたくないのか?」と言ってきたんで、「はい、イヤです」と。
—— え!?
土田 でも、その大先輩は「しょうがねえな。土田はそういうやつだもんな」と笑って許してくれました。これって本当に日頃から、どんな先輩に誘われても僕がそういう態度なので、「もうあいつはそういうやつだから、仕方がない」「あいつは来ないやつだから」と認識されているんですよね。でも、逆にたまに飲み会に誘われて行くと、「あれ、土田が来てくれたぞ!」とちょっと評価が上がるんですよ。
—— ギャップで評価があがると。
土田 そうですね。だから、無理して行きたくもない飲み会に行っている人は、精神的にも時間的にも大変だと思いますよ。芸人でもそういうやつって多いんですけど、「行きたくもない飲み会に行ってるぐらいなら、おもしろいネタを1個作れや!」って若いころはよく思ってましたけどね。
—— でも、そういっためんどうくさい人間関係っていうのは芸人さんだけじゃなくて、会社員にも通ずるところはあると思います。
土田 僕は自分が経験したことしかしゃべれないんで。会社に入ったことはないから、組織の人間関係とかはよくわからないんですよ。それに、人の性格は全部違うとは思うから、その悩みへの僕の回答が本当に正しいのかわからない。
だけど、なんか僕の本を読んで、その人にとって使えるところがあったら、使ってくれたらいいんじゃないですかね? 本の値段だって1000円ぐらいですし。まぁ、1000円もこの本に払うのは、僕だったら確実に損だと思いますけどね(笑)。
(おわり)
1972年生まれ。埼玉県出身。お笑いコンビ「U-turn」解散後、ピン芸人としてさまざまな番組で活躍。ガンダムからサッカー、家電まで、さまざまな分野に造詣が深く、老若男女から幅広い支持を集めている。また、三男一女の父親である。レギュラー番組に『そうだ旅に行こう』(TX)、『バイキング』(CX)、『ジョブチューン』(TBS)など。また、ラジオ番組『日曜のへそ』(LF)などのラジオ番組も担当。
構成:神田桂一 写真:小島マサヒロ