チャレンジ村上春樹】タイトルの名前がつくお店にいってみた!

ケトルVol.08は、「村上春樹」特集!
作品に夢中になるほどに、一文字も余すところなく理解したいと思うようになっちゃう村上ワールド! その魅惑の世界を体当たりで探究していく「チャレンジ村上春樹」。第1回は、村上春樹の小説のタイトルを冠したお店を、ライター自ら「突撃隊」となってレポートします! 取材・文/神田桂一

そのとき、僕はボーイング747のシートに座っていたわけではなく、秋田新幹線「こまち」に乗っていた。やれやれ。なんでこんなことになるのだろう。

今号の「ケトル」の原稿を書き終え、休暇で台湾へ旅行に行っているとき電話がかかってきた。最初、無視しようかとも思った。南国の熱気は今まさに僕の旅行をその休暇的ピークに持ち上げようとしていたからだ。でも僕は電話に出た。編集長からだった。

「村上春樹の小説は『ネーミング』がわりに重要なんだ。『海辺のカフカ』ではナカタさんが猫に名前をつけたり、『ねじまき鳥クロニクル』では猫の名前がワタヤノボルからサワラに変わったりする。それには意味がちゃんとある。だから、村上春樹の小説のタイトルがお店の名前になっているところ、行ってきてくれないか、追加で」

「よくわからないな」とは言えなかった。村上春樹的世界ではこのようなことはよくあることだ。オーケー、やってやろうじゃないか。そういうふうにして、僕のネーミングをめぐる冒険は始まった。 秋田駅から男鹿線という単線に乗って約20分、追分駅に降りて僕はタクシーを拾った。

「どこまで行かれますか 」「このあたりに『ノルウェイの森』というホテルがあるんで すけど、わかりますか」「ああ、わかります、このあたりはわりにそのようなホテルが多いですからね」

見かけにだまされないように、とは言わなかった。車はどんどん森のなかに入っていく。10分ほど走らせると、まるでガンジス川で沐浴する奈良の大仏のようにその建物は現れた。想像していたようなビルでなく、戸建の建物が並ぶペンションといったような趣きだった。さっそく支配人の小玉さんに話を聞いた。

『ノルウェイの森』 秋田県潟上市天王字北野 98-5 /☎018-878-5877/24時間

「オープンは2008年です。社長が村上春樹さんの『ノルウェイの森』を読んだとき、冒頭の〝ノルウェイの森が機内でかかるシーン〞がとても印象的だったそうです。すごくヒットした小説ですし、若い人を呼び込みたいという思いを込めて、この名前にしたそうです。そしてじつは社長の名前もワタナベっていうんですよ」

小玉さんは笑顔で話しつづけた。このホテルは東日本大震災の支援をしていたり、誕生日のサプライズ企画をしていたりと、とても経営努力をしている素敵なホテルだった。

「でもはるばる大変でしたね」

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村上春樹が大好き!

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「無駄に価値がある!」がコンセプトの、雑誌『ケトル』。その毎号の特集をcakesで配信していきます。第8弾のテーマは「村上春樹が大好き!」。村上春樹作品の主人公は優柔不断だって言われることがあるけれど、寄り道して、いろんなモノを受け入...もっと読む

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