僕はときどき夢を見る
おかしな夢 懐かしい夢
ひとりの見知らぬ女が
僕を愛してくれる
そして僕も 彼女を愛する
会うたび 違う女のようで
そのくせ おなじ面影を残し
誰より僕を愛してくれる
僕はときどき夢を見る
本当のことを話す夢
ひとりの見知らぬ女に
僕は何も隠すことがない
髪の色さえ 僕は知らない
彼女の名も 僕は知らない
だけどどこかで 失くした名前の
甘やかな響きだけ 覚えている
僕はときどき夢を見る
本当は誰より知っている
ひとりの見知らぬ女のことを
目が覚めて
口の中に残った甘さ
紅茶を入れよう
ポール・ヴェルレーヌ(1844-1896)
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