たくさんお金があればいい店が作れるとはかぎらない
平野紗季子(以下、平野) 紺野さんがすてきだと思うお店の話のなかで、「オンリーワン」という言葉が出てきましたが、紺野さんがご自分のお店をオンリーワンにするうえで心がけていることはありますか?
紺野真(以下、紺野) そうですね……質問とそれるかもしれないですけど、ウグイスを始めたときから絶対にぶれないようにと思っているコンセプトは、「マスの対極」ってことですね。僕、基本的に自分がサブカルでいたいなと思っているんです。
たとえばお金をいっぱい持っているとか、従業員がいっぱいいるとか、大量生産でできるとか、リソースにものを言わせて作る店と正反対の位置にいたい。その理由は、まあ、最初自分が実際にお金を持ってなかったからなんですけど(笑)。
平野 あ、本の中のエッセイでも書かれてましたね。
紺野 うちの親に頼んで少しだけお金を借りたのを合わせても、マックスで300万円しかなかったんですよ。しかもまるまる使っていいわけじゃない。実際に物件を見ていると、「あれ、家賃を5万円増やしたらこんなにいいところ借りられる」とか、どんどん上を見ちゃうんだけど、開店したら利益が出るというものでもないですからね。できるだけ節約して、結果250万円でオープンしました。そうするうちに、それまで自分が思っていたことがお店のコンセプトにどんどんリンクしてきて。
平野 「こういうお店にしたい」ということが、お金をかけないでお店をつくることとリンクしてきた?