別離した2つの人類——それぞれの愛、勇気、希望のクロニクル
イントロコミック、いかがだったでしょうか?
星間宇宙船は膨大な時間をかけて宇宙を航行していくわけですから、乗組員の最初の世代も、その次の世代も、そのまた次の世代も、本人自身が目的の地に辿り着くことはできません。それでも、宇宙船という閉ざされた空間の中で、生き続けていくことが宿命づけられるのです。しかも、ただ生きていくのではなくて、一人ひとりがパートナーを見つけて、夫婦となり子を産み育てていかなければなりません。そうしないと、乗組員はいつか絶えてしまうわけですから——。
一方でニューエデンでは、未開惑星の開拓に乗り出した人々が苛酷なサバイバルとアドベンチャーに挑むことになります。地球からは一切の文明の利器を持ち込めなかったので、原始時代のような状態からのスタート。当然スマートフォンやパソコンはなく、電気やガスといったライフラインも皆無で、最低限の食料や眠る場所にも事欠く有り様。そこへ「カーペットビーフ」や「シャドーカラオケ」、「スナーク」といった未知のモンスターたちが襲い掛かります……。
「もし、地球が無くなってしまったら」——からはじまり、滅びの運命に抗おうとする人々が、宇宙船と新惑星という2つの場所で「生きていくこと」、それが全体を貫くテーマです。2つの場所で「生きていく」人々が、愛しあい憎みあい、ぶつかり合っていく中で生まれる小さな奇跡のストーリーが全31話、それが『怨讐星域』という作品です。
絶対おすすめのエピソード「七十六分の少女」
新惑星の開拓者たちを襲う謎のモンスターとの極限バトル「スナーク狩り」(Ⅰ巻収録)、身分違いの恋を叶えるために起きた宇宙船内の珍騒動「閉塞の時代」(Ⅰ巻収録)、独居老人が命を賭けて守ろうとした地球の思い出「ウィリアム・ガズの部屋」(Ⅱ巻収録)などなど、全3巻の中には「生きていくこと」にまつわる悲喜劇が、たっぷりと詰まっています。
中でもおすすめなのが、Ⅱ巻の最後に収録されている「七十六分の少女」!
星間宇宙船が、いよいよの軌道上に到達——そんな折のこと。船内エンジニアのジョナ・ハリスンは、他人と話すよりも機械を弄っている方が好きなぐらいの寡黙な男でした。日々の仕事への充実感と、そこはかとない虚無感を抱いていた彼はある日、船内で不思議な少女と出会います。
彼女には言葉が通じない。しかも、出会った場所から一歩も動くことができない。ようやく聞き取れたのは「ニホン」という言葉でした。ニホン、日本……しかしそう呼ばれていた国が存在していた惑星は、もうずいぶん前に消えてなくなってしまったはず——。いったい少女は何者なのか。
彼女の正体が明かされるとき、孤独な男の未来に一筋の光が差し込みます。
『怨讐星域』全31話の中でも屈指のボーイ・ミーツ・ガール。必読の一篇です。
ジョナをはじめとするの人々が、あるいはで決死の開拓に従事するの人々が、『怨讐星域』というクロニクルのラストシーンで、何を目にすることになるのか——。作品の最後に示された“答え”は、現代を生きる私たちの、ほんの少し先の未来に対する“理想”でもあり“希望”でもあります。どうかこの愚かしく滑稽で、でも美しい人間たちの大河ロマンをお楽しみください。
『怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク』 ISBN 9784150311926
『怨讐星域Ⅱ ニューエデン』 ISBN 9784150311933
『怨讐星域Ⅲ 約束の地』 ISBN 9784150311940
著:梶尾真治/カバーイラスト:toi8/ハヤカワ文庫JA/2015年5月22日 全3巻同時発売/定価各950円(税込)
サイン会のお知らせ
『怨讐星域(全3巻)』連続サイン会 in 熊本市 開催!
■蔦屋書店 熊本三年坂
【日時】5/30(土) 15:00~16:00
【参加条件】蔦屋書店 熊本三年坂において『怨讐星域(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)』のうち1冊購入された先着50名のお客様に整理券を配布します。3冊購入された場合はすべてにサインいたします。
【問い合わせ先】蔦屋書店 熊本三年坂 電話096-212-9111(営業時間9:00~26:00)
■金龍堂まるぶん店
【日時】5/30(土) 16:30~17:30
【参加条件】金龍堂まるぶん店において『怨讐星域(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)』のうち1冊購入された先着50名のお客様に整理券を配布します。3冊購入された場合はすべてにサインいたします。
【問い合わせ先】金龍堂まるぶん店 電話096-356-4733(営業時間10:00~21:00、金・土・祝前日21:30まで)