働きすぎて死ぬのはおかしい。

働かないと、家族を作らないと、お金がないと、本当に幸せになれないのでしょうか。京大卒の日本一有名な“ニート”、phaさんが提唱する自由で伸び伸びとした生き方。その名も『持たない幸福論』の一部を特別掲載いたします。初回ですが、いきなり「あとがき」と「ゆるく生きるためのブックガイド」から。

あとがき

 今日もまたサイゼリヤに来てしまった。家の近くのサイゼリヤは駅からも幹線道路からも遠いのでいつもあまり混んでいなくてお金をかけずにのんびりと過ごせる第二の自宅のような場所だ。
 平日昼間はランチとドリンクバーのセットが六百十円(税込)で頼めるので、午後二時か三時頃に遅めの昼ごはんを食べてから夕方過ぎまでドリンクバーでカプチーノをお代わりしつつ本を読んだり本やブログに載せる文章を書いたりするというのが最近のよくある行動パターンになっている。

 家には机と椅子がないからすぐに横になってだらだらしてしまうので、何か作業をしたいときは喫茶店やファミレスに来ることが多い。
 ファミレスのいいところは安いところと机が広いところと、あとはひたすら放置してくれるところだろうか。最近の水さえもセルフサービスで取りにいかなければいけない格安系ファミレスでは呼び出しボタンを押さない限り店員は一切やって来ないので、注文したあとに何時間もだらだらくつろいでいても居心地が悪くならない。
 僕は大体店の隅っこの席で靴を脱いで椅子の上であぐらをかいて机の上にノートパソコンを広げてキーボードをカチャカチャと打っている。

 そういえばノートパソコンが最近壊れてしまったので新しいのを買った。Chrome OSというグーグルが最近作ったOSが載っているやつで、値段は新品で二万八千円。安いマシンだけど、ネットを見たり文章を書いたりするだけならそんなに不自由なく使える。
 文章を書くというのはお金を得る手段としてはあんまり稼げなくて大変だけど、趣味としてはあまりお金をかけずに長く楽しめてコストパフォーマンスが良いから、みんなもっと趣味として文章を読んだり書いたりをいっぱいすればいいと思う。
 今はブログやSNSなど気軽に書ける場所はたくさんあるし。僕も今回たまたま本を書いているけど、もともとは十年以上ずっと趣味でブログを書いていただけだった。ネットで何かを発信するといろんな反応が返ってきたり知り合いが増えたりするので楽しいし。

 文章を書く力を付けるにはたくさん本を読むのがいい。面白い本を読むと人に紹介したくなったり自分の思ったことを書いたりしたくなるものだし。僕は大体いつも図書館で借りた本ばかり読んで暮らしているんだけど、この本で伝えたかったことの一つは、「本に書いてあるようなちょっと難しい知識は現実の生活と切り離されたものではなくて、知識と現実は繋がっていて、知識は人生を変えるし社会を変える」ということだと思う。
 この本は、本で得られる知識と、僕の怠惰な生活と、お金がなくてもいろんなことをやっていく具体例みたいなものの三つを、シームレスに繋げて混ぜ合わせて、できるだけ読みやすい文章で説明してみた、という感じだろうか。

 僕のことを「京大を出てまともに働かず貧乏暮らしをしているのはもったいない」などと言う人もいるけれど、僕が大学受験や大学生活で得たものは本を読んだり学んだりすることの面白さや勉強の方法やコツで、今の僕の生活はその得たものを十分に活用できていると思う。何かを学んで身につけて活用する、そのやり方さえ忘れなければ、どこに行ってもわりとなんとかやっていけるものだと思っている。

 僕が一冊目の著書『ニートの歩き方』を出版したのは二〇一二年のことだった。その後、次は対象をニート周辺に限らずに、もっと広く「なんか人生疲れるなー……」って思ってる人全体に向けて何かを書いてみたいという気持ちはあったんだけど、のんびり進めていたらいつの間にか三年も経ってしまっていた……。まあ「働きすぎて死ぬのはおかしい」という内容の本を書くために働きすぎるのは何やってるんだという感じがあるので、そんなものでいいだろうか。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。ではまた、ネットや本などの文章かもしくは現実世界でか、どこかで機会があればお会いしましょう。

pha
http://pha22.net/

ゆるく生きるためのブックガイド

 僕がこの本で書いたいろいろなことはほとんど全部僕がゼロから考え出したオリジナルなものではなくて、僕が今まで読んで影響を受けたいろんな本の内容を集めて並べ替えて、その上に僕の「だるい、働きたくない」という怠惰さをまぶしてリミックスしてまとめたような感じ。
 大体僕が文章を書くときは、「世の中にはこんな本やこんな本があって面白いよ」というのを紹介したくて書いているようなところが半分くらいある。だから、この本を読んだ人がこの本を入り口としてさらにいろんな本を読んでいってくれたらいいなと思うので、各章を書くにあたって引用した本や影響を受けた本のリストを最後に置いておきます。
 よかったらいろいろ読んでみてください。

はじめに
本田由紀『社会を結びなおす──教育・仕事・家族の連携へ』(岩波ブックレット)

第一章 働きたくない
國分功一郎『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(ハヤカワepi文庫)
見田宗介『宮沢賢治──存在の祭りの中へ』(岩波現代文庫)

第二章 家族を作らない
岩明均『寄生獣』(講談社)
長谷川寿一・長谷川眞理子『進化と人間行動』(東京大学出版会)
真木悠介『自我の起原──愛とエゴイズムの動物社会学』(岩波現代文庫)
グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫)
西川祐子『住まいと家族をめぐる物語』(集英社新書)
久保田裕之『他人と暮らす若者たち』(集英社新書)
信田さよ子『母が重くてたまらない──墓守娘の嘆き』(春秋社)
上野千鶴子・信田さよ子『結婚帝国』(河出文庫)
上野千鶴子・古市憲寿『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります──僕らの介護不安に答えてください』(光文社新書)
上野千鶴子『おひとりさまの老後』(文春文庫)

第三章 お金に縛られない
近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)
伊藤洋志・pha『フルサトをつくる──帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方』(東京書籍)
伊藤洋志『ナリワイをつくる──人生を盗まれない働き方』(東京書籍)
宮本常一『生きていく民俗──生業の推移』(河出文庫)
ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄──一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』上下巻(草思社文庫)
真木悠介『時間の比較社会学』(岩波現代文庫)
養老孟司『養老孟司の旅する脳』(小学館)

第四章 居場所の作り方
pha『ニートの歩き方──お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法』(技術評論社)
與那覇潤『中国化する日本 増補版──日中「文明の衝突」一千年史』(文春文庫)

本書のまとめ
湯浅誠『反貧困』(岩波新書)


次回、「子どもを作ることを絶対視しすぎるのは息苦しい。」は5/29(金)更新予定。


「もっと自由に、伸び伸びと。」
日本一有名なニートphaさんが提唱するこれからの生き方。

持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない
『持たない幸福論 』働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない

この連載について

持たない幸福論

pha

本当に働かないと、家族を作らないと、お金がないと、幸せになれないのでしょうか。京大卒の日本一有名な“ニート”、phaさんが提唱する自由で伸び伸びとした生き方。その名も『持たない幸福論』の一部を特別掲載いたします。

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コメント

takahirobona 先輩。いろんな意味で。 2年以上前 replyretweetfavorite

nazenazeboy "文章を書く力を付けるにはたくさん本を読むのがいい。面白い本を読むと人に紹介したくなったり自分の思ったことを書いたりしたくなるものだし" 2年以上前 replyretweetfavorite

yskb2 『文章を書くというのはお金を得る手段としてはあんまり稼げなくて大変だけど、趣味としてはあまりお金をかけずに長く楽しめてコストパフォーマンスが良い』 2年以上前 replyretweetfavorite

mtbjw824 すごく心が楽になった。  2年以上前 replyretweetfavorite