chapter5-7 LINE絨毯爆撃

静寂の賢者の時間も終わり、つかの間の休息を楽しんだ。そして、僕は、また動き出す……。

 まずは友美へ。

[今度の水曜ミーティングは出席できる?]

 僕と友美の間で、『水曜日ミーティング』は、仕事帰りにいつものラブホに行くことを表す秘密のコードだった。水曜日は彼女の日だ。

 次は由依へ。玲子とセックスしたあと、僕は彼女のことをより愛おしく思うようになった。

[勉強がんばってる? 明日、家でごはん食べない?]

 スランプから抜け出し、玲子というAクラスの女に自信を持ってアプローチできたのも、すでに由依という21歳のAクラスの女で実績を作り、モテスパイラルに乗っていたからだ。僕に自信を与えてくれた彼女の貢献を考えれば、尊重されてしかるべきだ。月曜日の夜の優先権は、まずは由依に与えることにした。

 そして、玲子へもメッセージを送った。女は、男とセックスしたあとに、またデートに誘われるのかとても不安なんだ。僕は女を不安にさせて自信を奪うような、ひどい男じゃない。

[今週は仕事で会えるね。仕事以外でも、僕はまた、玲子に会いたいと思ってる。今週はいつが空いてる?]

 ナンパで収集した女たちのLINEに対して、絨毯爆撃を開始。

 Aクラス以上という縛りで、これだけの数の女の連絡先を収集するのが、どれほど大変なことか、ナンパを本格的にしている男なら誰もが理解するだろう。

[元気?][何してんの?][ナンパだからって、無視とかなしね。とりあえず、連絡してよ。][久しぶり。メッセージありがとう。最近、何してるの?][わたなべだよ。覚えてる?][元気? 火曜日のランチの時間空いてる? おいしいパスタのお店を見つけたんだけど。][水曜日の3時ぐらいに、たまたま品川のほうに行くんだけど、お茶でもどう?][また、クラブにいっしょに行きたいな。さっそく、木曜日の夜なんかどう?]……

 次々といろんな女たちから返事が来る。僕はそれらの一つひとつに適切な言葉を返していく。全国高等学校総合体育大会に出場する卓球選手みたいに。

[とりあえず、連絡した。][なんか、もっとかわいいメッセージ送って欲しかったな。「本当に連絡してくれたんだね、ありがとう!」みたいな。]

[パスタ行きたい!][11時半はどう? 12時すぎると混むからさ。]

[水曜日はちょっと出れない。][じゃあ、また、別の日に誘うよ。]……

 ……

 友美から返事が来た。[うん。水曜ミーティング出れるよ。またね]

[OK]と返す。

 ……

[えー、私、そんなにクラブなんかに行かないよ。何か私のこと誤解してない?][ごめん。誤解してたみたい。次は、僕の部屋に直接誘うよ。]……

 ……

 23人の女にLINEを送って、返事が返ってきた11人の女たちと僕はいま同時に会話している。

 僕のPC画面に、それぞれの女に対応するLINEのウィンドウがびっしりと並べられている。11個も並んだ自撮りのキメ顔のアイコンや犬の写真なんかが、次々と僕に話しかけてくる。お互いに知り合うわけがない女の子たちが、まるで友だち同士みたいにスクリーンの中で並んでいるのはとても不思議な光景だ。

 じつは11人ぐらいと同時にチャットするのは、聖徳太子ほど聡明である必要はなかった。タッチタイピングさえできれば誰にでもできる簡単なことだ。大学に通っていない18歳のキャバ嬢でさえ、もっと多くの客と同時にチャットしているのだ。

 瞬く間に、月曜日から金曜日までのランチとディナーの予定がすべて埋まった。

 水曜日の午後、僕は品川駅にある大空電機のオフィスを訪れた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
ぼくは愛を証明しようと思う。

藤沢数希

恋人に捨てられ、気になる女性には見向きもされず、非モテな人生をおくる主人公のわたなべ。ある日、恋愛工学と出会い、彼の人生は大きく動き出す……。 ファイナンス、経済学、エネルギー政策に関する著作をもち、リスク・マネジ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

kuniken_817 この続きは小説を読むことにしよう。> 2年弱前 replyretweetfavorite

toshifumi1017 Amazonから27日配送のメール。なんか、ひとり取り残された感じ。 2年弱前 replyretweetfavorite