chapter5-6 フェーズシフト

玲子には恋人がいたが、そんなことはいまの僕には関係なかった。ボーイフレンドクラッシャーを駆使して、順調にコマを進める。

 僕たちは、いつの間にか2時間以上も話していた。2本目のワインが空きそうだった。これ以上飲む必要はない。僕はここまでで、Cフェーズを完璧にクリアしていることを確信していた。次は、場所を変えながら、Sフェーズへうまくシフトさせればいい。

「この辺りは散歩するとすごく気持ちいいんだけど、そろそろ出る?」

「ええ、そうしましょう」

 僕は何のためらいもなく玲子の手を握った。そして、何度も使ったことがある品川の運河沿いの散歩コースへと彼女をリードする。ここは、キスをするスポットが無数に配置されている。

 まだ、恋愛工学を覚えたてで、北品川に住んでいたとき、ここで何人の女にC→Sフェーズシフトルーティーンを仕掛けたんだろう。当時はこんな専門用語はまだ習っていなかったが、ACSモデルを知ったあとに思い出すと、あれはフェーズシフトルーティーンだったいうことがよくわかった。

 きれいにライトアップされた運河にかかる鉄橋を渡り、運河沿いを歩くと、ベンチがあった。

「ちょっと、座ってお話しない?」

「そうだね。夜風が気持ちいいし」

 他愛もないことを話していると、僕と玲子の間に、ちょっとした沈黙が訪れた。

 僕は彼女の目を見つめ、これまでに何度も使った、はじめてのキスルーティーンを起動させる。

「キスしたいの?」

 僕は彼女の目を見つめて言った。

 ここで相手が (1) イエス と言えばそのままキスすればいい。しかし、この選択肢が選ばれることはあまりない。

 (2) ノー だったら、何か考えているみたいだったから、などとごまかして、また、次のキスのチャンスを窺う。

「わかんない」玲子は言った。

 そして、(3) えー、わからない、どうしよう、などの曖昧な返事が返ってきた場合はこうする。

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ぼくは愛を証明しようと思う。

藤沢数希

恋人に捨てられ、気になる女性には見向きもされず、非モテな人生をおくる主人公のわたなべ。ある日、恋愛工学と出会い、彼の人生は大きく動き出す……。 ファイナンス、経済学、エネルギー政策に関する著作をもち、リスク・マネジ...もっと読む

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hisaya_010279 フェーズシフト| 「キスしたいの?」 僕は彼女の目を見つめて言った 「わかんない」玲子は言った 「じゃあ、確かめてみよう」 僕は玲子にキスをした。そして、キスをしながら長く抱きしめた !?wwwww 2年弱前 replyretweetfavorite