評価は「いる人材か、いらない人材か」のみ
—— 会社ってだいたいはじめは少人数だから、みんな自分の持ち場でそれぞれ仕事をする、というふうに始まります。でも、だんだん会社が大きくなって、組織を運営していこうとすれば、そのうち「評価」が必要になるフェーズに入ってくる。でも評価って、面倒ですよね。
森川亮(以下、森川) そう。評価って、する方もかなりの時間もとられますからね。
—— 森川さんの場合、評価システムは、どういう基準でつくりましたか?
森川 やはり、結果ですよね。あとは周りの評価です。同僚や上司など、だいたい5人から評価してもらいます。評価の観点はシンプルで、「この人はいなきゃいけないか、いなくてもいいか」。
—— いやあ、身も蓋もないですよね。でも、チームの本質です。
森川 みんなが「いなくてもいい」って思っていたら最悪でしょう。そういうときは改善を求めるか、最悪の場合、やめてもらうこともあるかもしれません。ちなみに、社長も例外ではなくこの観点で評価されます。
—— ええっ!?
森川 全然成長していないとか、人の気持ちが分からないとか。そう評価されたときには、さすがに一日凹みましたけど(笑)。
—— あはは。それ、本人も見るんですか。
森川 もちろんです。そうしないと改善できないし、次に活かせませんから。
—— 社長に「人の気持ちがわからない」と直言できる社風はすごいですね。ところで社風といえば、ベンチャーでよくあるのは、ビジョンに向かってみんなでうわーっと突き進む姿だと思うんです。でも、LINEはそうはしたくなかったと本にありましたが。
森川 ええ。「ビジョンは持たない」、「目標はあっても打ち出さない」と決めていました。
—— 同時に、本の中では、「情熱が大事」とも語られています。では、ビジョンや目標を言語化せずに、どうやってみんなの進む方向を揃えていくのでしょうか。いま、経営者としての僕が、いちばん興味があるところなんですけど。
森川 なるほど。私なりの考えをお答えすると、一般的な会社の仕組みって、社長の自己満足が多いと思うんですよ。ビジョンを壁に貼るとか、唱和させるとかね。僕は一般社員の時代が長かったので、正直面倒くさいなと思っていて(笑)。それでも、社長になったときはそういう「社長らしいこと」をやろうとしたんですけど……。
—— あ、やろうとしたんですか!(笑)
森川 ええ。でも、社員から猛反対されました。「そんな時間があったら仕事させろ」って。もちろん、ひとつの方向にまとまることに意味があるときもあるでしょう。ただ、その舵を切るのは、社長の言葉ではない。社員たちの、マーケットに対する危機感であるべきです。危機感を持っている人が集まっていれば、自然とあるべき姿に変化するはずですから。
—— それもサバンナ的な価値観なのかなあ。でも、明確な目標がないと、十人十色のさまざまな危機感を持って、組織としてのまとまりがなくなってしまいませんか?
森川 いえ、それが大丈夫なんです。お客様のことだけ考えていれば、一見ばらばらな意見が出ても、結果的にいいものが生み出せます。