女が病まずに生きるには?

娘が毒母に苦しむのは、男性社会のせい?!—前編

『母がしんどい』『ママだって、人間』で母と娘の関係を両側から描いて多くの女性から共感を得た田房永子さんと、『傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』でご自身の母との対立や不完全家族について書いた小野美由紀さんが「女の病み」について徹底的に語り合います。男性優先社会が女性に与える「無意識の抑圧」は、母と娘の関係にどのような影響を与えているのでしょうか。なやめる女性、必読です!

男性優位社会と、毒母問題は実はつながっている?!

小野美由紀(以下、小野) 今日は田房さんと初めてお話できて、大変嬉しいです。私、実は田房さんの本を第1作から読ませていただいていて。

田房永子(以下、田房) ありがとうございます。

小野 最初のエッセイは「母がしんどい」。自分とお母さんという、すごく半径の小さい関係が主題ですよね。次の「ママだって、人間」が、育児と、母親が社会で感じている苦しさについて。そして今回発売された「男しか行けない場所に女が行って来ました」では、男性中心の社会の不平等さ、おかしさを描いていますよね。作品を重ねるごとに、輪を広げるようにして主題が社会的に拡張されてゆき、どんどん視座が高くなられている。

田房 「母がしんどい」を出してから、「私も母がしんどいんです」と話しかけられるようになったんですが、まるで同じセリフをお母さんから言われていたり、お母さんの言動のパターンがそっくりだったりして、自分と同じ思いを抱えている人ってこんなに多いんだ、と驚きました。それが、自分の母親と同じような性格のお母さんがいるんだな、という解釈では済まない規模なので、社会的な影響も絶対あるはずだと思うようになりました。

小野 いわゆる「毒母」の問題と、男性社会で女性が重圧を感じていることは、じつはつながりがある?

田房 私の中では、そうですね。子どものころ、母や学校の先生、周りの女性の大人たちから理不尽な目に遭わされまくっていたんですけど、一体どうしてなのか、彼女たちは「あなたのためなのよ」とか「あんたは子どもだから分かんない」とか言って納得できる説明をしてくれない。だから大人になれば分かるんだ、と思って、理解できない大人の言動をノートにメモしてる小学生でした。当時の疑問は「大人たちはこれは愛情ゆえなんだ、と言ってるから、大人になったら子供への愛がわかるんだろう」というものでした。

小野 はい。

田房 あれは単なる意地悪だったんだって20代後半になってやっと気づくんですけど、そのあと子供を産んでから、彼女たちがなぜ、ちっちゃい子をあんな風にいじめなきゃいけなかったのかが、わかるようになりました。とにかく社会からの「女なら子どもを愛して当たり前、子どものために自分が犠牲になるのが当たり前」という圧がすごいんですよね。それが前提で世の中が動いてる。女の人たちも自分はそういう生き物なんだって思い込んでるし、そうでなければいけないって思ってる。大きなものにはあらがいようがないから、鬱憤が全部子どもへ漏れ出ちゃうんですよね。私は「女の人って無条件で子どもを愛するんですよね!」っていうのを全身から出してた子どもだったから、余計憎たらしかっただろうなって。母や祖母が言ってた「あんたも大人になれば分かるから」は前世代からのSOSだったんだ、と思ってます。

小野 一個の母娘関係を円の中心、社会をその円の外側の広い部分だとすると、社会で起きている男女の問題の波が、外から内側に向かって押し寄せてきて、まず、育児にしわ寄せが来て増幅されて、最終的に、すごく大きな波となって、母と娘の関係にかぶさってくる、みたいな。

田房 今日は「女の病み」がテーマですけど、病んで当たり前だと思います。公園に来てるパパ、ママ、をよく見ると、ぜんぜん違う。パパたちは子どもを見ながらベンチで寝てる人もいれば、ゴルフのフォームの練習とか、シャドーボクシングしてる人もいたりする。なんか伸び伸びしてるんですよ。個性がある。だけどママたちはみんな同じような行動しかしない。周りを気にしてるからだと思う。無意識の抑圧が半端ないんですよ。今日はPARCOブックセンターさんでお話させていただいてますが、そこに「暮らし上手の和食教室」っていう本が置いてありますよね。私、最近、ああいう世界にすごく癒やされるんですよね。

小野 いわゆる「上質な暮らし」「丁寧な暮らし」系の本?

田房 男性優先社会に対して真面目に怒ってたんですけど、疲れてきたのか、体が癒やしを求めて、「丁寧にお弁当」系にいっちゃう。あっちの世界では、麻の布でできた服着た人とか、パンみたいな靴履いている人が、木の板に、優しい味付けの食べ物を置いて出してくれますから。なんか他のことを忘れられる。男社会と闘うことに疲れた女性はあっちに行くんじゃないかな。

小野 女性が「オーガニック生活」みたいなのに行きがちなのは、男性社会のしわ寄せのせい?(笑)

田房 女性の病みと実はリンクしていると思います。

男は敵? 味方?

小野 私は、実はあんまり男性に対する怒りみたいなのを感じたことがなくて、そこはちょっと共感がしづらいんです。だから、田房さんのエッセイを読んで、「新幹線で男性を恐いと思っている人がいるんだ」ってことにすごく驚いて。私は、新幹線でどで〜って寝ているサラリーマンがいても、勝手にその人の足をどけて、自分もどで〜んと寝るタイプ。なんなら寄っかかっちゃう。

田房 男性は「読んで、えっ、びっくり!」って人が多いですね。

小野 それで「そうか、そういうふうに実は私が意識していないだけで、女性に見えないしわ寄せが行っているんだな」と意識した一方で、同時にこれは男性だけが一方的に悪いのか?と思った。男女間のコミュニケーション教育がうまくいっていないせいもあるじゃないかなと思う。

田房 というのは?

小野 私は一時期、ナンパ師の男の子と仲良かったことがあるんです。ナンパ師というのは、ストリートでナンパして、どれだけ女性とセックスできるかをTwitterとかで競い合ってるんですよ。まあ、女としては見ていて不快なんですけど、彼らのブログを読むと「自分がいかに昔モテなくて、女性にひどい態度をとられて傷つけられてきたか」を延々と書いている。「ナンパで理想の女性と付き合えるぐらいスキルが高まったら、もう俺はその過去のトラウマを払拭できるんだ!」という、そういう思考の人がすごく多くて。私は、女性が男性を恐いって思う気持ちがあると同時に、男性も実は女性がけっこう恐いんじゃないかなと思う。コミュニケーションの上で、男女双方に障壁がある。

田房 「男も女を恐がってるんだ」というのはすごく言われますね。それでぶつかり合って終わっちゃうんです。

小野 あ〜……、そこ、ぶつかり合って終わってしまう以外に道はないのかな?

田房 男と女、どっちが恐いかとか、「女は大変」に対して「男も大変」って話になると不毛ですよね。「男の人たちはいろいろ大変だから私たち女でなんとかしましょう」っていう歴史を続けた結果、今こうなってるんだけどこれってどうなの、って話だから、ふりだしに戻っちゃう。

日本語は病みやすい言語

小野 少し話は飛びますが、私は、自分の中にある恐怖や問題を克服するために、「言語化する」事はすごく強力な手段だなと思っていて。

田房 言語化?

小野 病んでいる人というのは、実は自分の問題が何なのか、言語化できないことってすごく多いんですよね。怒りや恨みに関しては、すごく強い気持ちがある。「お母さんはなんであんななんだろう」みたいな。でも「じゃあ、あなたは一体何がしたいの」「あなたはお母さんとどういう関係を結びたいの」と聞くと、フリーズしちゃったり、混乱してしまう人がすごく多い。それは、日本語が、主語をはっきりさせなくっても通じちゃう言語だからなんですよ。

田房 日本語に特有なんですか。

小野 「自分はどう感じているか」をいちいち把握しなくても話せてしまう言語。だから、問題の中心に自分を据え置くことができないんですね。すごく病みやすい言語だなって思う。そういうふうに、今、自分が感じていることを明確に言語化できないということが、他者への恐怖だったり、他者との関係の混乱、トラブルを引き起こしているな、と。

田房 なるほど。

小野 男女のコミュニケーションの断絶も同じだと思うんですよ。私、女性の書いてるブログで「元彼や男性に対する恨み」みたいなのを延々と書いてるやつが苦手なんですよ。「合コンでこんなしょぼい男に当たった」だの「こんなヤリチン男はゆるせん」だの。  
 くだらない、ただのメンヘラ女のヒステリーじゃん。自分が主体的に状況をベターにする努力をしてないからでしょ、としか思えないんですが、そういうのも含めて、男女の問題って、女性の側が、自分の欲望だったり、怒りや「コレは嫌だ」っていう気持ちを上手に言語化しさえすれば、簡単に解決する問題が多いなと思うんですよ。男性は男性で、コミュニケーションが苦手だから、言語化しない。その、互いに自分たちの望むものを相手に対して言語化しないでいることが、ずれを産んで、恐れを増長しているな、と思います。

田房 どうしたらいいんですかね? 自分はできても相手が言語化できない場合とかもめちゃくちゃあるじゃないですか。

小野 ん〜〜〜。私はそうは思わないですね。それは、相手とコミュニケーションをする力が自分に不足してるだけだなと考えちゃいますね。

田房 言語化させようとしてもできなかったりする、というか。

小野 人のせいにしていてもしょうがないなって思うんですよ、そういう時。

……次回、トークは更にヒートアップ。「自己肯定感を高めるには?」をテーマに、田房さんと小野さんが激論を交わします。


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この連載について

女が病まずに生きるには?

田房永子 /小野美由紀

『母がしんどい』や『ママだって、人間』で母と娘の関係を両側から描いて多くの女性から共感を得た田房永子さんと、『傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』でご自身の母との対立や不完全家族について書いた小野美由紀...もっと読む

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コメント

CH0BBY 面白い◇ 男性優先社会に対して真面目に怒ってたんですけど(略)体が癒やしを求めて、「丁寧にお弁当… https://t.co/AbISy0fbh1 10ヶ月前 replyretweetfavorite

halophilia #スマートニュース 1年以上前 replyretweetfavorite

Singulith >「私、女性の書いてるブログで「元彼や男性に対する恨み」みたいなのを延々と書いてるやつが苦手なんですよ ~くだらない、ただのメンヘラ女のヒステリーじゃん。自分が主体的に状況をベターにする努力をしてないからでしょ」  https://t.co/5ijf4hcoMD 2年弱前 replyretweetfavorite

todomaru2 毒母問題なんて、家族内でのマウンティングとメスの縄張り争いじゃん(巻き込まれた被害者談 2年弱前 replyretweetfavorite