YOUはフェミニズムとオピニオンから遠ざかる

今回のコラムで取り上げるのは、バラエティやドラマなどで活躍中のタレント、YOUさん。共演者に手厳しい見解を連発しているイメージがありますが、そこにはずっと保ち続けているYOU流の姿勢があると武田砂鉄さんは分析します。YOUさんが提示する「いじわるのキャッチボール」、そして「女子の人生」とは?

野球で例えたがる上司、中継ぎ投手に指名される部下

もう5年ほど前になるが、テーブルとハグするかのように酔い潰れた知人女性が「なにかと野球の例えをしてくるオヤジが嫌いなんだよアタシは!」と店じゅうに響き渡る声で叫んだ。この人は酔い潰れて何がしかを叫んだ後で死んだように眠るのがワンセットだから、この時点ではちょうど3塁ベースをまわったくらいだ。あるプロジェクトを進める数名のチームに加わった彼女は、そのリーダーの男から「中継ぎ投手のような役回りを期待している」と言われたことにしつこく憤慨していた。「野球の例えを仕事に持ち込むんじゃねぇよ!」と憤る彼女の主張はまったく正しい。先発、中継ぎ、リリーフ、代打の切り札、送りバント、犠牲フライ、逆転満塁ホームラン……プロジェクトを野球化したがる上司は、その采配が部下にちっとも届いていないことにおそらく気付いていない。

中継ぎ投手には器用な選手が多い。ランナーがいなければ、球数を少なく抑えるために早めにゴロを打たせてアウトをとるピッチングを心がけるし、ランナーの溜まった場面で登場すれば、長打だけは避けようと内角低めにボールを集める。先発やストッパーと違って、試合のどの場面で必要になるか分からない中継ぎ投手は、常に体を整えておく必要がある。長いシーズンを振り返った後で、監督は、中継ぎ陣の出来・不出来が成績に大いに影響していたことを痛感するのだが、だからといって、プロジェクトリーダーが部下に「中継ぎ投手のような役回り」を期待してはいけない。

「いじわるのキャッチボールがおすすめ。楽しいわよ」

2人でいると仲良しなのに、みんなといると私の悪口ばかり言ってくるんです、という「大阪府/18歳」からの悩み相談に、「いじわるのキャッチボールがおすすめ。楽しいわよ」と野球の例えで答えたのはYOUだ(『YOUのこれからこれから』宝島社)。多くのバラエティやドラマに、先発でも、ストッパーでも、4番打者でもなく、中継ぎ投手的に出場し続けるYOUは、置かれた状況を端的に把握し、コースを突いた配球で、安定した試合運びを呼び込める存在として重宝されている。

ドラマにおけるYOUは、演じるというより押し並べてYOUそのままだ。そのことから分かるのは、とにかくこの人は、自分の投球フォームや球種を変えないということ。時折バラエティで見かける、彼女から率先して投じられる「いじわるのキャッチボール」にしても、キャリアが積み重なったことでそれが許容されたわけではなく、中継ぎ投手として登場し始めた頃からその姿勢は定まっていた。

まだまだ球種が見破られていないYOU
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365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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