ジジジジ

3(悠一)

甘くさわやかな健太の初恋、切なくもほろにがい恵の初恋。1章・2章で描かれた二つの「初恋」と絡み合う最後の初恋は、どんな味がするのでしょうか。アンソロジーに収録された枡野浩一さんの短編「ジジジジ」、いよいよ最終回です。(『ピュアフル・アンソロジー 初恋。』より)

3(悠一)

 看板描きのバイトで近くまで行くことになり、この機会に中村先生の店に行こうと思い立った。

 中村先生は高校時代の体育教師で、僕は主に保健体育を教わっていた。体育の授業は、隣のクラスの男子との合同。
「……このような時期にちょうど性交をすると、さて、どうなるか?」
 という先生の質問に、
「やばいことになります」
 男子の一人がそう答えたら、
「ちがいます。おめでたいことになります」
 と真顔で訂正したりして、クラスをわかせていた。そのころ先生は結婚を控えていた。からかい半分に婚約者とのセックスの頻度を質問されても、けっして完全無視せず、
「先生は、もう若くないので、時々です」
 と照れながら答えていた。当時まだ二十代なかば、今の僕と同い年くらいだったはずだ。

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ジジジジ

枡野浩一

「男の子がいったあとって、首のあたりで音がしない? ジジジジって」―― アンソロジー『初恋。』(ピュアフル文庫)のために書き下ろされた短編に加筆修正を加えたものになります。歌人としても著名な枡野浩一さんが織り成す、手の届かない恋の物語。

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toiimasunomo 【06/11 16:11まで無料 】 約5年前 replyretweetfavorite

toiimasunomo 【近況】自作では一番好きな小説「 までですが も読みたい友人やフレンドはご一報ください。 約5年前 replyretweetfavorite