若いうちから人生を俯瞰しよう
生きていて当たり前、今を楽しもう、と若い頃は思う。そして年齢を重ねると、経験がものを言うようになる。八〇代になれば、二〇代の頃よりも、自分自身のことや世間での立ち位置がはっきり見えるだろう。しかし八〇歳になる前に気づくことができたらどうだろう? 多くのチャンスを見逃さずにすむのでは? 私がクライアントに、人生を俯瞰で見るようにアドバイスするのは、そういうわけだ。早いうちから行動を変えたり正しい目標を定めるのに、活用してほしいのだ。
わかりやすい例が「中年の危機」だ。恵まれたナルシストの中年が自分をもてあましているだけ、と鼻で笑う人もいるかもしれない。しかし、中年の危機はもっと根深い問題であり、メンタルトレーニングの世界では、ここに解決のヒントが潜んでいると考えられている。幸福学の研究者によると、中年はもっとも幸福を感じにくい世代である。四〇歳になって、人生で初めて、肩にのしかかった責任の重さに気づくのだ。
四〇歳になると、子どもがいる人も多いし、自分の親が年老いてくる。職場では中間管理職になっていて、上からも下からもアドバイスを求められる。重圧に押しつぶされそうになってもおかしくない。しかもこの年齢になると、先々の限界が見えてくる。あれだけあった時間をもう味方につけられないのだ。
挑戦を好むタイプの人なら、決断のときと考えるかもしれない。このまま今の生活を続けていたとして、一〇年後はどうなる? 今とまるで変わらない、つまり現状維持の可能性が濃厚だ。それは、自分が「本当に」望んでいることなのか?
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。