日本SFと文学賞

翻訳・解説・エッセイ・コラムと、SF界のオシゴトを縦横無尽にばりばりこなす超人・大森望氏。氏の〈SFマガジン〉誌上の連載コラム「大森望の新SF観光局」がcakesに出張! 5月14日、第28回三島由紀夫賞を上田岳弘の『私の恋人』(「新潮」4月号)が受賞しました。東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』から5年ぶりに、SFが三島賞を射止めたのを記念して、今回は「SF観光局」の第5回の一部を抜粋して再録します(SFマガジン2007年5月号より)。

(日本SF大賞を除く日本の非公募)文学賞におけるSFの受賞状況はどうなっているのか、ざっとおさらいしておこう。

 もっともSF率が高いのは、金沢市が主催する泉鏡花文学賞。第一回受賞作に半村良『産霊山(むすびのやま)秘録』を選んだのを皮切りに、眉村卓『消滅の光輪』、筒井康隆『虚人たち』、倉橋由美子『アマノン国往還記』が受賞。その他、中井英夫『悪夢の骨牌』、日影丈吉『泥汽車』、吉田知子『箱の夫』、寮美千子『楽園の鳥』など幻想文学系の受賞作も多い。とにかく『消滅の光輪』に授賞したインパクトは強烈で、鏡花賞は日本SF史に末永く残ることになった。

 その次のランクが、中央公論新社主催の谷崎潤一郎賞と、年間最優秀短篇小説賞にあたる川端康成文学賞(新潮社後援)。谷崎賞は、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、日野啓三『砂丘が動くように』、筒井康隆『夢の木坂分岐点』、池澤夏樹『マシアス・ギリの失脚』、村上龍『共生虫』が受賞。

 川端賞は筒井康隆「ヨッパ谷への降下」のほか、津島佑子「黙市」、吉田知子「お供え」、目取真俊「魂込め(まぶいぐみ)」、辻原登「枯葉の中の青い炎」など。歴史の長い讀賣文学賞小説賞も、安部公房『砂の女』、井上ひさし『吉里吉里人』、澁澤龍彥『高丘親王航海記』、日野啓三『光』、村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』などに授賞している。こうしてみると、純文学系の賞は(芥川賞を別にして)わりあい非リアリズム小説に寛大で、狭義のSFはともかく、幻想的な作品の受賞はそう珍しくない。

 反対に、エンターテインメント系の文学賞は、SFが候補になることも珍しい。唯一の例外が日本推理作家協会賞。長篇では、小松左京『日本沈没』、宮部みゆき『龍は眠る』、梅原克文『ソリトンの悪魔』、菅浩江『永遠の森 博物館惑星』、古川日出男『アラビアの夜の種族』、浅暮三文『石の中の蜘蛛』が受賞している(評論その他の部門では石川喬司『SFの時代』、風間賢二『ホラー小説大全』が受賞)。

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大森望の新SF観光局・cakes出張版

大森望

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コメント

m47kng  日本のSFはつまらなすぎるwww 4年以上前 replyretweetfavorite

AEbisu 広瀬正がもう少し長く生きていれば、直木賞の歴史は変わっていたはず。タイムマシンがあればな、と思う。  4年以上前 replyretweetfavorite

radicon 直木賞、SFは難しいのかな…近年の傾向に注目。  4年以上前 replyretweetfavorite

Hayakawashobo SF作品が三島賞を射止めたのを記念して、今回は本誌過去記事から【文学賞におけるSFの受賞状況】を抜粋再録! 4年以上前 replyretweetfavorite