新訳 世界恋愛詩集

赤ワインを注げ」バイロン

何世紀も昔から、男性たちはこんな気持ちでお酒を飲んできたのではないでしょうか? 社交界の寵児として多くの恋愛遍歴を重ね、道ならぬ恋から国を追われた情熱の詩人バイロンの一篇「Fill the goblet again」が「詩人天気予報」などで話題の詩人・菅原敏さんの超訳により現代に蘇ります。気鋭の現代美術家・久保田沙耶さんのアートワークとともにお楽しみください。


もう一度 グラスを満たして
喜びあふれる この夜に
赤ワインを なみなみ注げ
人生なんて くるくるまわせ
グラスの中には 嘘ひとつない


やらないことは ひとつもなく
あの子のまぶしい視線を泳ぎ
もちろん恋なら いくつでも
だけどそんな時でさえ
俺はよろこび 感じなかった


若いころには 信じていた
恋が羽を持ち 飛び去ることはないと
もちろん親友だっていた
だけどいま 俺の舌は語るだろう
赤い酒 真実の友はおまえだけ


恋の快楽 溺れるとき
恋敵は悪魔と共に 俺を呪った
もちろん世間も羨んだ
だけどおまえを ひとくち飲めば
世間も 俺も 歌いだすから


女たちは 伴侶を見つけ
日暮れと共に 友も消え失せ
それでもおまえは変わらない
たとえ年をとったとしても
月日と共に 赤い輝き


戻らぬ季節 さようなら
享楽の日々 さようなら
グラス掴めば やさしいなぐさめ
飲み干して 覗き込む
テーブルの上 いにしえよりの真実


ぶどう ぶどう 側にいて
やがて俺が死ぬ時も
赤ワインを なみなみ注げ
人生なんて くるくるまわる
この罪すべて 許しておくれ



「赤ワインを注げ」

ジョージ・ゴードン・バイロン(1788-1824)

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新訳 世界恋愛詩集

菅原敏 /久保田沙耶

あまたの恋を書き残してきた、かつての詩人たちに、新訳という名のオマージュを。『新訳 世界恋愛詩集』は気鋭の詩人、菅原敏による新連載。いにしえの恋愛詩の輪郭を、菅原敏のいまの言葉でなぞっていきます。古い詩集に絵の具を落とし、新たな色で輪...もっと読む

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コメント

hasex どこか荒涼とした言葉の響きなのに熱いものを感じた。「女たちは 伴侶を見つけ」からの流れがたまらない。 5年弱前 replyretweetfavorite

8kotty8 "ぶどう ぶどう 側にいて" バイロンの酒讃歌の超訳。男性じゃないけど気持ちわかる。 5年弱前 replyretweetfavorite

sayakubota 【ぶどう ふどう】 小さい頃、ミサの時にお母さんだけブドウ酒を飲めるのがとても羨ましかった。 バイロン『赤ワインを注げ』 新訳世界恋愛詩集 https://t.co/sK0wLtAVVe http://t.co/TFMahuhDvC 5年弱前 replyretweetfavorite

sugawara_bin 『赤ワインを注げ』バイロン 女たちは 伴侶を見つけ 日暮れと共に 友も消え失せ それでもおまえは変わらない 月日と共に 赤い輝き 菅原敏/久保田沙耶|新訳 世界恋愛詩集|ケイクス https://t.co/V7iqvIbCFu http://t.co/21iXKWLgO5 5年弱前 replyretweetfavorite