心のベストテン

サザン、ミスチル、ワンオク……大物バンドが切りひらく新たな道

大御所バンドのサザンオールスターズと若手のONE OK ROCK。世代もやっている音楽も違うのに、桑田佳祐さんはONE OK ROCKのことを意識しているのだとか!? 「サザンは洋楽コンプレックスからのガラパゴス進化」「ワンオクは主戦場を海外に」など、それぞれの新譜を元に分析していきます。そして、6月に全23曲入りの「USBアルバム」をリリースするMr.Childrenの動向を読み解きます!
芸人、DJとして活躍されているダイノジ・大谷ノブ彦さんと、音楽ジャーナリストの柴那典(しば・とものり)さんの響きあうナビゲーションをお楽しみください。


イラスト:長尾謙一郎

「ガラケー」としてのサザンオールスターズ

大谷ノブ彦(以降、大谷) 今回はこのテーマが気になるんですけれど。何ですか、これ?

柴那典(以降、柴) 僕、サザンオールスターズとONE OK ROCKは「VS」の構図にあると思ってるんです。

大谷 そうですか? 確かに同じ事務所アミューズの所属ですけれど。

 もちろん世代もやってることも全然違うし、別に対決してるわけじゃないとは思います。でも、桑田さんはどうやらONE OK ROCKのことを意識してる。

大谷 そうなんですか?

 まず、サザンオールスターズは、3月に10年ぶりのアルバム『葡萄』をリリースしました。これがほんと素晴らしいアルバムで。

葡萄(通常盤)
『葡萄』

大谷 最高ですよね、ほんとに。

 で、このアルバムのインタビューで、桑田さんは「僕らはガラケーみたいなもんだから」って言うんです。そういう文脈の中で「僕らがやるべきことはワンオクとは違う」って言っている。日本語で、日本で独自に進化した歌謡曲の歴史を引き継いでる、そこの部分で新しいものを作ったと。

大谷 海外に変な対抗意識を持っているわけじゃない。

 一方、ONE OK ROCKは2月にアルバム『35xxxv』をリリースしている。これが海外レコーディングで、完全に世界基準のサウンドを作っている。


ONE OK ROCK「Cry out」

 一方で、サザンのニューアルバムのキャッチコピーは「大衆音楽の粋、ここに極まれり!」というものです。サザンはそういう勝負にきている。

大谷 なるほどなあ! でも、もともと桑田さんは洋楽への憧れとかコンプレックスをすごく持ってた人じゃないですか。
 僕、実は一番サザンオールスターズを好きだったのが初期の頃なんです。一番洋楽コンプレックスがすごくて、どうやって洋楽を大衆に届けるかということをすごく苦悩していたころ。その時代のアルバムは今聴いてもハッとする。

 「勝手にシンドバッド」(1978)とか「いとしのエリー」(1979)の頃ですよね。

大谷 でも、今はそこへのコンプレックスを全く感じさせない。歌詞にしても、みんなが今サザンに求めているものに全部応えている。それって本当にすごいことだと思うんです。

柴 「東京VICTORY」もそういう曲ですね。


サザンオールスターズ「東京VICTORY」

大谷 ひょっとしたら、昔のほうがエッジが尖ってた、最近は凡庸になったって思う人もいるかもしれない。でも、今やってることも相当レベルの高いことだと思います。

 しかも桑田さんがすごいのは、今もちゃんと現在進行形の邦楽にアンテナを張っていることなんですよね。ONE OK ROCKも評価していたし、クリープハイプも好きだと言っていた。おそらく刺激も受けているはずで。

大谷 だからこそ、自分の使命をちゃんと引き受けて、なおかつ革新的なものを作れるわけだ。

 サザンは「国民的バンド」ってよく言われますけど、新作はまったく大御所っぽくないんですよ。フレッシュなものになってる。僕は「アロエ」って曲が大好きなんですけれど、あそこで「勝負でろ」って歌ってるわけです。


サザンオールスターズ「アロエ」

大谷 いいですよね。熱いなあ。

 自分を鼓舞してるし、それが聴き手にも伝わるし。キャリアに胡座をかいてない。サザンみたいなバンド、ほんと他に誰もいないなって思います。

狙って生まれたヒットなんてない

大谷 一方でONE OK ROCKは今の日本をどう思ってるか、ってことですよね。

 ワンオクのTAKAは、日本のことを全く意識しないためにアメリカでアルバムを制作しようと思ったそうなんですよ。そのために自分で海外のプロデューサーにコンタクトをとった。
 何故かと言うと、今自分が戦うべき場所は海外にあると考えているからで。そのためには「J-POPのシーンがどうなっているか」とか「自分たちの日本のファンがどう思うか」ということを考えたくない、と。

大谷 サザンとは真逆の発想だ。

 完全に海外のことしか見ていない。

大谷 なるほどなあ。それも戦略とかじゃなくて、結局自分たちが直感的に気持ちいいことをやるためにはそうしなきゃいけないってことですよね。それをそのまま行動に移した。

 結果的に、ONE OK ROCKのアルバムって、完全にアメリカの今のメインストリームのロックバンドと渡り合えるような筋肉質な音になっている。

大谷 僕はお昼のニッポン放送でラジオをやってるんですけど、そこでサザンの曲をかけると、やっぱりみんなの思い出の中にヒットするわけなんです。反響もすごくある。
 一方で、ONE OK ROCKのような音楽をかけるのは、昼のAMラジオだとちょっと慎重にならないといけないと思う自分がいる。それは聞き手のことを想定しすぎちゃってるからなんです。「その人たちが好きそうなものってなんだろう」って。それがストレスになることもある。
※ ニッポン放送『大谷ノブ彦 キキマス!』 毎週月~木 13:00~16:00

 何が受けるかを考えすぎちゃう、と。

大谷 でね、今のニッポン放送の会長が、おもしろいこと言っているんです。

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大谷ノブ彦 /柴那典

「音楽についてパァッと明るく語りたい! なぜなら、いい音楽であふれているから!」。ハートのランキングを急上昇しているナンバーについて、熱く語らう音楽放談が始まりました。 DJは、音楽を愛し音楽に救われてきた芸人、ダイノジ・大谷ノブ...もっと読む

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m1377281533 大谷さんとの対談連載「心のベストテン」、更新されました。今回は「 約2年前 replyretweetfavorite

yuzumeets_an “柴 思い込みで突き進んだものが支持を集めるってことですね”  約2年前 replyretweetfavorite

kenchadra この2人の座談ほんとわかりやすくておもしろい。 約2年前 replyretweetfavorite

man_nentoko ニッポン放送の会長の話が(■∈■)のお言葉みたいに思えてしまった! 約2年前 replyretweetfavorite