課長は部下からじっくり査定されている
上司が部下を会議室で査定するように、部下は上司を居酒屋で査定している。これまでの見聞きを平均化すると、社長をはじめとした役員の査定は最初の1杯くらいで終わる。つまり、場慣らし程度だ。議論が盛んになるのは、課長クラスについて。ここが長い。各セクションに点在する課長クラスをじっくり査定していくのは、アイドルグループの推しメンを決めるのに似て、議論が長期化する。
「顔は好みなんだけど、スタイルがちょっとね」という偉そうな推しメン査定と同様に、「仕事はできるんだけど、人望がちょっとね」という偉そうな推し課長査定が、やがて「こないだ天丼を驕ってもらったんだけど食べ方が汚くて最後は衣だけになってた」や「毎年やり取りしている年賀状を並べてみたんだけど、年々、娘さんが課長に似てきてかわいそう」といった、明らかな査定外案件が査定に盛り込まれていくことになる。
人はテレビのことを終電まで語らない
役員のように、会社に1人か数人しかいないポジションについては、イエスかノーかで査定が済まされやすいが、会社に何人もいる課長クラスは議論が延々とループしやすい。年齢の近い職場の仲間と繰り返し飲めば、当然ながら近しい世代に対する愚痴はこぼせないから、最近の課長トピックスを提出し合う「課長ループ」が毎度の酒のつまみになる。結論など出ずに、「あれ、もうこんな時間」を繰り返している査定飲み会の議題は、課長に握られる。そもそもワタシ、会社員じゃないくせに、飲み会も滅多に行かないくせに、ひとまず断定してみる。
議論が長引くと、議論は「中堅どころ」に行き着く。大御所と新人は常に真っ先に論じられるからこそ、逆に、議論が深まらない。テレビに出ている人について、終電まで語り尽くすことはない。そうなると、テレビに出てくる人について論じられるのは大御所と新人、或いは突出したムーブメントくらいに限られる。「マツコ・デラックスはなぜ流行る?」が未だに鮮度を持ってニュース記事になるのは、人はテレビのことを終電まで語り尽くさないからである。
名倉潤は語られなさすぎているのではないか
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。