ここ数年で新しいギアが入ったSMAP
柴那典(以下、柴) 前回は関ジャニ∞と渋谷すばるの話をしましたが、今年2月にはSMAPが『華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ』、嵐が『Sakura』と、それぞれシングルをリリースしました。
大谷ノブ彦(以下、大谷) SMAPの新曲、これがまたすごくいいんですよ! 特に椎名林檎さんが書いた「華麗なる逆襲」が素晴らしい。
柴 ゴージャスなサウンドで、椎名林檎らしいきらびやかなポップソングになっている。SMAPのシングルは毎回クオリティの高い曲ですよね。
大谷 SMAPこそ、90年代からアイドルっていうことを利用していろんなミュージシャンやシンガーソングライターが才能を発揮してきたグループですからね。で、そのことが結果的にアイドルの本質を浮かび上がらせた、っていう。
柴 しかも今は40歳を超えてもアイドルであり続けるということを体現している。未曾有の境地だと思います。
大谷 TOKIOもそうなんですよ。TOKIOも一時期シンガーソングライターの人に曲を書いてもらっていた。中島みゆきさんが「宙船」を書いてヒットして、その後に長渕剛さん、甲斐よしひろさんが提供して、最後に椎名林檎さんだった。その「雨傘」っていう曲がまたいい曲なんですよね。そうやってTOKIOはアイドルという「足枷」、負荷をかけられた中で、音楽的に覚醒していった。
柴 そうなんですね。
大谷 で、やっぱりSMAPも国民的なグループになったあと一度セールスが落ちて、その後にいろんな挑戦を繰り広げているわけですよね。ここ最近でもサカナクションの山口一郎さんが「Moment」を提供したり。
柴 MIYAVIがEDMのアプローチで7拍子の「Top Of The World」を作ったり。それも格好よかった。
大谷 でしょう? でも、そういう路線を推し進めていくのかなと思ったら、去年のアルバムの『Mr.S』あたりからビッグバンドのサウンドに戻ってきた。
柴 SMAPの王道に戻ってきたんですね。
大谷 そう。それがまたいいんですよ。で、椎名林檎が書いた「華麗なる逆襲」が、またビッグバンドなわけですよ。これがやっぱり素晴らしい。
柴 やっぱりSMAPの音楽はここ数年で新しいギアが入った感じがありますね。
大谷 ありますねぇ。
柴 僕としては、ターニングポイントはやっぱり2013年の「Joy!!」なんですよ。ガールズバンド「赤い公園」の津野米咲さんが提供した曲。あれはサウンドもよかったけど、何より歌詞が最高。
大谷 わかる。あんなハッピーな曲ないですもん。
柴 〈無駄なことを一緒にしようよ〉という一節が素晴らしいですよね。そんなこと、アイドルに言われたことがない!
大谷 ははははは! 確かに。
柴 そもそも近代化した社会では無駄なことはしないというのが一つのテーゼですから。そのために合理化が進められている。でもそれはやっぱりみんなのストレスになっていて、そういうストレスを取り除く魔法の一言が〈無駄なことを一緒にしようよ〉だった。 で、その先にある曲が今回のもう一つの新曲「ユーモアしちゃうよ」だと思うんです。
大谷 なるほど。この曲の歌詞もポジティブですよね。作詞は権八成裕さん。
柴 〈経済的成長 人間的成長?〉とか〈幸せって何なの〉っていう歌詞と〈その笑顔 笑い声〉というサビが対比になってる。君の笑顔で悩みは吹っ飛んじゃうよって歌ってる。
大谷 アイドルが歌うべきことって、そういうことなんですもんね。だから本質はブレてない。SMAPが体現するアイドル像からはズレてないけれど、やり方が時代に沿って変わっている。アップデートされている。そこがSMAPの凄さだと思うところなんです。
嵐のターニングポイントはどこにあった?
柴 で、一方の嵐の新曲「sakura」。これもかなり好きなんです。ストリングスを意欲的に使ったダンスナンバー。今の嵐のサウンドにはヨーロッパのダンスポップとのリンクを感じるんですけれど、今回の曲は僕の中ではイギリスのクリーン・バンディットとつながってる。
大谷 ほお〜、なるほど。クリーン・バンディットもサマソニで来日しますよ。