見た目で人を攻撃する人間と愛玩する人間。誰も見た目から自由になれない。

嫉妬、執着、野心。初めて描かれる“女子アナ”たちの衝撃のドラマ! 小島慶子さんの処女小説『わたしの神様』(幻冬舎)を7日間連日で特別掲載します。
第4回は、無遠慮なMCに笑顔で切り返す女子アナの苛立ち。元女子アナだからこそ描けた華やかなテレビ局の舞台裏、そして“女子アナ”たちの強烈な素顔が浮かび上がります。野心と美貌を宿した女たちのバトルをご堪能ください。

「沢登よしあきの午後ワイド」は、主婦に人気の情報番組だ。いつも通り料理コーナーを終えると、CMの間にまなみは司会席の沢登の横に座った。専属メイクが、しきりに沢登の髪にスプレーを吹きつけている。妻がネクタイを直す。髪型が決まると、沢登は愛用のミントタブレットを口に放り込んだ。スタジオに画面が切り替わると、大げさに眉を上げながら切り出した。

「いやあ、まなみちゃん、最近またまた話題だね」

 グッと顔を近づけると、(かす)かに口臭の混じったミントが香る。

「ニュースキャスターデビューだって?」

「はい、実はそうなんです」

 予定通りのやりとりだ。

「驚いたねえ。では、こちらをどうぞ!」

 リニューアルする「ウィークエンド6」の番組宣伝が流れ始めた。ヒールを鳴らして歩く足元のアップから()め上げるカメラ。新しいセットのキャスター席に座ったまなみがアップになる。瞳には、強い光が宿っている。

「あなたの知らない、彼女が伝える」

 男性のナレーションに合わせて、番組タイトルが浮かび上がった。

「ウィークエンド、シックス」タイトルコールのまなみの声は、いつになく意志的で、セクシーだった。

 画面が沢登とまなみに切り替わる。

「来週の土曜日から『ウィークエンド6』のメインキャスターを務めることになります。みなさん、ぜひご覧ください!」

 まなみはにこっと笑う。

「ちょっとちょっとお、まなみちゃん、すごいじゃないの!」

 沢登は大仰に驚いてみせた。

「ニュースなんて、初めてでしょ? だし巻き卵も危うい人が、ちゃんとできるの?」

 スタッフの作った笑い声が響く。

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わたしの神様

小島慶子

嫉妬、執着、野心。初めて描かれる“女子アナ”たち衝撃のドラマ! 元TBSアナウンサーで現在ラジオパーソナリティーやタレントとして活躍中の小島慶子さんが、処女小説『わたしの神様』を上梓しました。cakesでは、本日より7日間連続で特別掲...もっと読む

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cnomiya2009 話がドライブしてきたー!…しかし読んでて辛く切なくなってきたよ→ 約4年前 replyretweetfavorite