北野武「ネタ帳を見たら『ジジイのヤクザが大暴れ』って書いてあったんだよ。」

『アウトレイジ』(2010年)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)と、それまでの常識を超えたヤクザ映画で大ヒットを飛ばした北野武監督。明日4月25日より劇場公開となる最新作『龍三と七人の子分たち』は、なんとヤクザを引退した「全員悪人」のおじいちゃんたちが繰り広げるジジイ大暴れエンタテインメントです。平均年齢72歳の超ベテラン俳優がスクリーン狭しと暴れまくるという、過去2作とはガラリと作風を変えた本作に込められた意図とは? 北野武監督に、監督を敬愛してやまない作家の樋口毅宏さんがお話を伺います。

北野武がいま輝いている3つの理由

日本を代表し続けるタレント!
80年代に漫才コンビ「ツービート」で人気を博して以降、お笑い芸人から司会者、俳優、映画監督まで各分野で才能を発揮。名実ともに日本の芸能界を代表する重鎮として第一線で活躍中です。

努力をやめない型破りの“天才”!
映画監督としては、1997年の『HANA-BI』でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。世界的名声を得たのちも、さまざまな作風にチャレンジし続けています。

最新作は集大成にして新境地!
最新作『龍三と七人の子分たち』は、登場人物が引退した元ヤクザでありながら、コミカルなエンターテインメント。監督・北野武と芸人・ビートたけしが融合した新たな世界観を確立しています。

残酷なことばかり考えてるわけにはいかない

— 本日インタビュアーを務めます作家の樋口毅宏と申します。よろしくお願いします。

北野武(以下、北野) よろしくお願いします。

— さっそくですが、『龍三と七人の子分たち』、ほんとにおもしろかったです。安定のくだらなさといいますか、ギャグがいちいちタチが悪くて。

北野 ふふ。

— 武さんの映画は、いつも3部作になっている印象がありました。たとえば、監督デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)から『3-4x10月』(1990年)、『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年)まで、あるいは『TAKESHIS’』(2005年)、『監督・ばんざい!』(2007年)、『アキレスと亀』(2008年)など。そして、その3作目を、それまでの2作とは趣向を変えているという印象があったんです。

北野 うん。

— 今作も『アウトレイジ』(2010年)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)と、硬派でエンターテインメントなヤクザ映画が続いたところで、今回思いっきりコメディタッチでした。しかも、登場人物はアウトレイジのなれの果てのというか、またまた「全員悪人」でした。

北野 まあ、「あいつをどうやって殺そうか?」とか、残酷なことばかり考えてるわけにもいかないでしょ。だから、一回休もうと思って。いま続けて同じ路線の三作目をやると「深作(欣二)さんに似てきたぞ」とかいわれちゃいそうだし。

— ああ、なるほど。既成のヤクザ映画の批評になっていました。

北野 それもちょっと嫌だから、なんかほかにねえかなって、自分で映画のあらすじなんかを書き留めてるネタ帳みたいなのがあるんだけど、それ見たら「ジジイのヤクザが大暴れ」って書いてあったのね。

— ははは!

北野 プロデューサーの森(昌行)さんが「それどうですか?」っていうから「じゃあ、いまから書くわ」って。他にも「親分は懲役刑の年数と、殺人と傷害の件数で決める」ってセリフのメモがあってさ。それが、バスでカーチェイスした後のオチにつながるんだけど。

— あれはひときわタチが悪かったです(笑)。日本だとマンガでしか見られないようスペクタクルがあって最高でした!

北野 そんなのが書いてあって、そのオチからさかのぼっていくんだけど。

— オチから逆算してストーリーを書かれたんですね。『キッズ・リターン』(1996年)のときも、最初はあの自転車の二人乗りで校庭をグルグル回ってるラストシーンだけを思いついていたとおっしゃっていましたが。

北野 そう。「これをやりたい」っていうイメージが最初にあって、『龍三と七人の子分たち』でも、あのオチにいたるまでをアタマから書いていくんだけど、じゃあ七人の子分はどうするかってんで、「はばかり(便所)のモキチ」だとか「五寸釘のヒデ」っていうキャラクターを作ろうと。

— みなさんキャラが立ってましたね。

北野 ヒデは五寸釘を投げるわけだから、その腕前を見せるには、殴り込みに行く暴走族の事務所にダーツがあるといい。

— あそこも爆笑しました。中尾彬さん扮するモキチは最高ですね。武さんの映画では、過去の作品で悪い役をやっていた人が次の作品ではいい人というパターンが多いです。『アウトレイジ ビヨンド』ではあんなにドスの利いた幹部を演じていたのに。
 あとは、サウナで龍三の指キャップが抜ける(※龍三はヤクザ時代に小指と薬指を詰めている)っていうネタがやりたかったから、指キャップをつける理由を考えたり。

北野 そうやって台本を行ったり来たりしながら、筋に必要なものを配置していくんだよね。

— 武さんは、よく映画作りを方程式に例えられますよね。ジャンルこそ違えど、僕も物書きとして、そこから合理的なプロットの組み立て方など多くを学ばせてもらいました。

ヨボヨボのおじいちゃんにも好きにやってもらった

— 今回、主人公の龍三を演じた藤竜也さんは北野映画初出演だったわけですが、それを含めてキャスティングも非常に効いていました。

北野 龍三っていうのは、ヤクザの親分の中の親分だから、まず迫力ないといけないわけ。だけど、相当恥ずかしいシーンもあるわけよ。

— ですね(笑)。

北野 そんなひどい役だから、「藤さん、ほんとにやってくれるのかな?」って不安だったんだよ。でも、「やる」っていうから、じゃあ決まり。それから、さっきもいったけど、中尾(彬)さんを使おうっていうのがちょっと頭にあったから、まずこの2人が決まって、龍三親分と子分のつなぎ役として、近藤(正臣)さんね。あとのおじいちゃんたちは、写真と経歴を見て選んで、初めてホン読み(脚本の読み合わせ)をやったの。そしたら、ほんとにヨボヨボの人もいて。
 こっちが何か指示出しても「えっ?」って。本番でも「よーい、スタート!」っていったらしばらくして、「……えっ?」っていうから、「回ってますよ!」「あ、すみません。私ですか?」「フィルムが!」「えっ?」なんて具合だからさ。

— あははは。

北野 困ったなこれと思って、ヘタに芝居をつけないで、好きにやらして撮っちゃった。そしたら、おもしろいのが撮れた。
 暴走族の事務所で、おじいちゃんが若いやつを相手に仁義切るところはやたら笑ったんだよね。「お控えなすって」「『お控えなすって』ってなんだよ?」「さっそくお控えありがとうございます」「控えてねえよ!」って、完全に漫才になってる。あそこは、現場では2人別々に、一言ずつ撮って、それを自分の漫才の間でつないで、音をでかくしたり小さくしたり、かぶせたりしたんだけど、意外にうまくいってね。ああいう掛け合い大好きだから。

— 武さんは常々、「映画作りは編集が一番おもしろい」ということをおっしゃっていますものね。

北野 藤さんのオナラなんて、俺があとから勝手につけちゃってるからね。

— え! そういう芝居じゃなかったんですか?

北野 藤さんが試写のとき、「監督、俺あんなにオナラしましたか?」って言ってたよ(笑)。じじいだと、もうゆるくなっちゃってるから、自分の意識してないところでオナラしちゃうんだよ。


次回「あらゆる芸事には、“年季”が必要ってことはある。」につづく

北野武(きたの・たけし)

1947年1月18日、東京都生まれ。74年、ビートきよしと漫才コンビ「ツービート」を結成。80年代の漫才ブームのなかで爆発的な人気を獲得。同時に俳優としても活躍し、『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ多くの作品に出演。初監督作は、主演も務めた『その男、凶暴につき』(89)。以降、年1本に近いペースで作品を世に送り出し、『HANA-BI』(98)で第54回ベネチア国際映画祭金獅子賞(最高賞)を受賞、評価を不動のものにした。自身初の時代劇に挑戦した『座頭市』(03)では第60回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。近年は“全員悪人”のバイオレンス・エンターテイメント『アウトレイジ』(10)と続編の『アウトレイジ ビヨンド』(12)が大ヒットを記録。『龍三と七人の子分たち』は17作目の監督作品となる。

聞き手:樋口毅宏 構成:須藤輝 撮影:吉澤健太



©2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会

4月25日(土) 全国ロードショー!
藤 竜也 近藤正臣中尾 彬 品川 徹 樋浦 勉 伊藤幸純 吉澤 健 小野寺 昭安田 顕 矢島健一 下條アトム 勝村政信 萬田久子 ビートたけし
監督・脚本・編集:北野 武 音楽:鈴木慶一
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野

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いま輝いているひと。

cakes編集部

あの人は、どうして輝いているのか。いま目が離せないあの人に、たっぷりお話を伺います。

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コメント

pommeblanc 藤さん、こないだA-studio出てたのも面白かった! 2年弱前 replyretweetfavorite

RieDorji 今までに全くない発想の映画。この映画絶対に見たいです!中尾彬さん素敵すぎ~! 2年弱前 replyretweetfavorite

Atack20 まずオチがあって、そこから逆算していくのは落語の影響かな? 2年弱前 replyretweetfavorite

chira_rhythm55 1件のコメント http://t.co/3IbipkeLvI 2年弱前 replyretweetfavorite