母性であらゆることを解決する
セーラームーンの圧倒的母性は、その物語内で生じる困難に対して、具体的な解決手段として作用する。
たとえば、セーラームーンの必殺技のなかには「浄化系」の技が多く含まれている。倒された敵の叫び声が「リフレッシュ!(refresh/元気を回復する)」「クレンジング!(cleansing/浄化)」だったりするのは、その証拠。厳父からの鉄槌ではなく、慈愛に満ちた母からの優しい諭しというわけだ。そのため、これらの必殺技が現場管理職チームをはじめとしたパーソナリティが存在する敵の「改心」に使われることも、しばしばである。
シリーズを通じた最終話である第200話「うさぎの愛! 月光銀河を照らす」でうさぎは、「私、この世界が好き。みんなのいるこの世界が大好き」といったマザー・テレサのような超絶博愛主義を唱え、銀河系最強のセーラー戦士であるギャラクシアを、ほとんど脱洗脳のような形で浄化する。その際のギャラクシアの言葉は「ありがとう、セーラームーン」。最終回のうさぎは多くのシーンで全裸であるが、その姿は女性的というより、まぶしい神々しさが漂っている。
病んだ心も、傷ついた体もすべて包み込み治してしまう力
うさぎの母性が究極的な“治癒”を施した代表例としては他に、土萠ほたる(セーラーサターン)の救済が挙げられよう。第125話「輝く流星! サターンそして救世主」においてうさぎは、憑依人格に支配されていた土萠ほたるを、精神的にも肉体的にも解放する。圧倒的な母性の力は、精神疾患すら治癒する(というアナロジーだ)。