旅で出会うひとびと
旅に出ると、それが国内であっても、ただそこにいる人が勝手に映画のセットの登場人物みたいに思えて、格好よく見えたりする。自分のいる街だって、知り合いになんかほとんど合わないんだから同じ事なのに不思議だ。
ベネチアでも、水上バスの車掌さんというのか、なんというのか、駅につくと綱をクイに舫って、ぴったりのところにとめる人がやたら恰好よく見えた。とくに同世代かちょっと上の女性がやっていたりすると、もう恰好よすぎてカメラを構えることもできなくて、結果写真をとりそこねた(おじさんは撮れるというあたり、我ながら差別的であると思う)。
そういえば昔中国に行った時も、路線バスの運転手が花柄のノースリーブのワンピースを来た若い女性で、白い手袋でぐいんぐいんバスを運転するのがえらく格好良くてしびれたのを思い出す。働く姐さんが好きか、私。
店を開けながら近所の人と話していて、いきなりラララ~と歌いだすおじさんも、美容室からロココ調のカツラをかかえて出てきて、路地に入ってスプレーをふきかけている若い兄さんも、橋のたもとに腰かけて無駄にポーズをとっているサングラスのシニョーレも、みんな妙に素敵に見える。
そして子供たち。
「カーニバル用に仮装した子 たちはさらなり、素でもなほ、ハトたちのおほくにとりかこまれたる」(枕草子もどき)
なんか朦朧としてきたけど、子供の可愛さというのはもはや反則だ。
いや、うん、本当にみんな物語の中にでてくるようだよ。きっと今私がこれを書いているこの場所も、同じように格好いいんだろう。自分がよそものであればあるほどに。
▲サンマルコ広場の入り口にて
▲「さわらないでね」という看板に忠実に従うお客様
▲鮮やかな鳥みたいに目に飛び込んできた
▲着飾った妹がちょっと誇らしいお兄ちゃん、かなあ
▲小さなプリンセス、威風堂々
▲仮面の人だって観光したい(たぶん)
旅の終わりに
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