これまで3冊刊行されてきた法条遥の《re~シリーズ》が、四冊目の『リライブ』で完結した(《re~シリーズ》という名称は、本書の佐々木敦による解説に従った)。
2012年、《ハヤカワSFシリーズ Jコレクション》の一冊として刊行された第一作『リライト』は、一九九二年、ひとりの少女が2311年から来たという少年と邂逅する学園SFだった。その先は文庫書き下ろしに媒体が移動し、第二作『リビジョン』は、同じ1992年、家に代々伝わる手鏡で自分の息子が一週間後に死ぬ未来を視てしまった女性が、さまざまな手段でその未来を改変しようとする物語。そして第三作『リアクト』は、3000年から1992年に来たタイムパトロールの少女が、『リライト』で語られた出来事の真実に迫る物語だった。
これら三作はそれぞれ独立しているようでいて、『リビジョン』を読むには『リライト』を既読である必要があり、さらにこの二作を未読であれば『リアクト』は理解できない——という構成になっている。そして、どの物語でも実に込み入ったタイムパラドックスが使われており、特に『リアクト』は複雑さが極致に達した感があった。どの一作をとっても二百数十ページという、昨今のエンタテインメントとしてはかなり短い分量のわりに、ロジックとパラドックスの凝縮感は尋常ではない。
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