最弱のものにも、最強の驚異あり

生物にとってもっとも重要なことは生き残ること。でも「強い者が生き残る」とは限らない。弱肉強食は自然の中のほんの一局面だ。
全体を見渡すと違った世界が見えてくる。


最小ノモノニモ、最大ノ驚異アリ。

ファーブルさんは、小さな虫たちを愛した。

(長田弘「ファーブルさん」より)

生き残ったものが強い!?


 自然界における「強さ・弱さ」は、ぼくたちが思い描くような単純なものではない、と稲垣は言う。

 「強さ」とは決して、他者を打ち負かすことではない。このことを理解するには、「生物にとって、もっとも重要なことは何か」とまず問うことだ、と。そして稲垣は答える。

「言うまでもなくそれは生き残ることである」

食う方が食われる方より強いといっても、その食べる方が滅んでしまっては何にもならない。稲垣はこう結論する。結局、「強い生き物が生き残る」のではなく、「生き残ったものが強い」のだ、と。

 弱肉強食という言葉のおかしさが、これではっきりしたと思う。それはまず、「勝ち・負け」—勝ちでなければ負け、負けでなければ勝ち—、という単純な二元論だ。そして、食う方が強く、食われる方が弱い、というこれまた単純な等式からできている。

 しかし、これが現実だと思ったら大間違いだ。それは複雑な現実全体の中から、ほんの一局面—例えば、ライオンがシマウマを追いかけ、捉えて、餌食にするというシーン—だけを取り出して見ているにすぎないのだから。

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弱虫」でいいんだよ

辻信一

私たちの生きる世界では「終わりなき経済成長」をテーマに人々が邁進しています。それをこなすのは大変です。誰もが効率的に働かなければ世界が回らないと思い込んでいます。過剰な世界を支えるのは「強い人たち」です。健康で体が強く、より早く、より...もっと読む

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