富を受け継いできたオールドマネー
歴史が浅いアメリカにはヨーロッパのような貴族階級はありません。そのかわりに上流階級として君臨するようになったのが何世代も富を蓄積した「オールドマネー」です。
代表的なオールドマネーは、18世紀から19世紀にかけてヨーロッパからアメリカに移住してきたルーズベルト、カボット、ロウウェル、デュポン、フォーブス、アスターといった一族です。政治や産業が最初に根付いたのがボストンやマンハッタンなので、富を何世代にもわたって受け継いできたオールドマネーは、今でも東海岸に集中しています。
オールドマネーの避暑地として知られているのが、ボストンやニューヨークからアクセスの良いナンタケット島。土地部分が123平方キロメートルという小ささで、しかも大部分が開発を許されない保護地です。新たに家を建てる許可がなかなか下りないので、常に供給より需要が大きく、景気が多少悪くなってもあまり不動産の価格が下がりません。過去6ヶ月に売れた家の平均価格は$2,335,652(約2億8千万円)で、最近で最も高い販売価格が$59 million(約70億円)といったところです。
別荘を持つ人の名前を挙げてみても、マイクロソフトのビル・ゲイツ、グーグルのエリック・シュミット、ゼネラル・エレクトリック元最高経営責任者のジャック・ウェルチ、デザイナーのトミー・ヒルフィガー、マイアミ・ドルフィンズ元オーナーのウエイン・ハイゼンガ……とそうそうたる顔ぶればかり。夏や祝日には小さな空港に自家用ジェット機が次々と着陸します。
けれども、何十億円もする豪邸を持ち、自家用ジェット機をお抱えのパイロットに操縦させて来る羽振りの良い人々は、ほとんどが、先ほど挙げたような、一代で巨大な富を作った起業家です。それができる資産があっても一桁安い家を買い、シングルエンジンのプロペラ機かヨットを自分で操縦してやってくるのが、オールドマネーのスタイルなのです。
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