第91回】クリスマスと同じぐらい大きなお祭り「イースター」を経てヨーロッパに春がやってくる!

ドイツのシュトゥットガルトに在中の川口マーン惠美さんが、EUから見た日本や世界をテーマにお届けするコラムです。


〔PHOTO〕gettyimages

本来のクリスマスは家族単位の静かな精神的行事

今日は、キリスト教の聖金曜日。イエス・キリストが十字架に掛けられた受難の日で、ドイツを始め、ヨーロッパの多くの国では祝日だ。キリスト教徒にとっては、たいへん重要な日である。

前日の木曜日は祝日ではないが、最後の晩餐が行われた日なので、これもキリスト教会にとっては重要。この木曜日から、受難の聖金曜日を経て、二日後の日曜日には、キリストがお墓から復活するイースター(復活祭)となる。

イースターは大きなお祭りなので、ドイツでは翌月曜日も祝日。つまりイースターは、キリストが蘇った日として宗教的に重要であると同時に、今では、 祝日が連なることから国民にとっては違った意味でも重要なお祭りとなっている。学校はどの州でも2週間程度のイースター休みがあり、日本の春休みのような 感覚。

キリスト教の国では、イースターは少なくともクリスマスと同じぐらい大きなお祭りだ。そして、どちらが楽しいかというと、文句なしにイースターの方に軍配が上がる。クリスマスとイースターは、同じ宗教行事でも雰囲気がまったく違う。

クリスマスは、宿を求めて彷徨っていたヨセフと身重のマリアが、ようやく馬小屋を見つけ、そこで夜中にキリストが生まれる。真冬の馬小屋であるか ら、救世主の誕生には、物理的に暗くて寒いイメージが付きまとう。さらに、感情的には、キリストの誕生は喜ばしいことではあるが、同時に、この幼子の歩む べき、厳しく短い人生の予感のようなものが深い影を落としている。手放しで誕生を喜ぶというよりも、もう少し複雑な感情がクリスマスにはある、と少なくと も私は感じる。

キリスト教の信者にとって、クリスマスというのは、自己反省を促す時期でもある。クリスマス前、約1ヵ月ほどの期間をアドヴェント(待降節または降 臨節)と呼び、身の回りを清め、静かに1年を振り返り、深い自省を行う期間とされている。1年でいちばん夜の長い時期なので、きれいに片づけた家の中で、 自省するには向いている。外は暗く寒いけれど、キャンドルで演出した家の中は、暖かくて敬虔な雰囲気となる。キリスト教におけるクリスマスは、派手なパー ティーではなく、本来、家族単位の静かな精神的行事だ。


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イースターの象徴は明るい日光とウサギと卵

一方、イースターというのは、人類の罪を一身に背負って磔になったキリストが、その二日後に復活したことを祝う行事だ。これにより、世界はバランス を取り戻し、秩序が回復するのであるから、文句なしにめでたい。金曜日の受難の暗いイメージが、日曜日にはあっという間にハッピーエンドに変わる。クリス マスに比べると、とても明るい雰囲気のお祭りだ。

イースターの明るさは、季節のせいもある。イースターは移動祝日で、その年により3月終わりから4月終わりのどこかの日曜となるが、いずれにしても この時期は、長く寒い冬が終わり、木の芽が吹き始め、鶏はどんどん卵を産み、子豚やら子羊が生まれ、とにかく日一日と春の訪れが感じられる心が弾む季節で もある。つまり、イースターと春の訪れ、つまり日の光は、ドイツ人の心の中ではきっちりと繋がっている。大人も子供も、イースターと春を前に、待ち遠しい 気持ちがどんどん膨らんでいくのである。

クリスマスの象徴が暗闇の中の光(キャンドル)とモミの木であるとすれば、イースターは明るい日光だ。そして、ウサギと卵!

なぜにウサギと卵かという理由としてはいろいろな説があるので、ここでは触れないが、とにかく町を歩けば、あちこちのショーウインドウは、ウサギと 卵を題材にしたディスプレイが満艦飾だ。特に、チョコレート屋さんは、ウサギの形をしたチョコレートや、卵型のチョコレートが色とりどり。スーパーはもち ろん、肉屋やパン屋も、突然、きれいに彩色したゆで卵まで売り始める。

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シュトゥットガルト通信

川口マーン惠美

シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。

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