第90回】 シュトゥットガルトは春爛漫! 歩行者天国の路上音楽家とドイツの日食フィーバーについて

ドイツのシュトゥットガルトに在中の川口マーン惠美さんが、EUから見た日本や世界をテーマにお届けするコラムです。


シュトゥットガルトの歩行者天国でクラシックギターを奏でる路上演奏家(筆者撮影)

シュトゥットガルトは春爛漫。ここは、市民の平均収入がドイツで一番多いという誉れ高い町だ。当然、購買力があるわけで、目抜き通りはいつも賑わっ ている。中央駅界隈は、大々的な都市開発が進行中だし、新しいショッピングモールや図書館など斬新なデザインの建物がどんどん増えていく。ドイツの他の大 都市と比べるなら、人々は真面目だし、清潔で安全。かなりよい点数が付くのではないか。

ただし、シュトゥットガルトの民が、ドイツの他の地域の人たちから好かれているかというと、その反対で、評判はあまりよくない。融通の利かないとこ ろ、吝嗇と言われそうなほどの倹約ぶり、保守的な思考といったものが、半分ステレオタイプのようにシュトゥットガルトの人の特徴とされ、敬遠されている。 ガリ勉で優秀だが、あか抜けない生徒が嫌われるのと、少し似ているかもしれない。ちなみに、同市の人口は59万人で、ドイツで6番目の大都市。私は、ここ の人たちはやはり少し田舎っぽいとは思うが、嫌いではない。

路上音楽家の質の向上と金融危機の関係

19日、あまりに暖かく、お天気が良いので、町に出てみた。Tシャツ1枚で歩いている気の早い若者もいる。多くのレストランやカフェが、早々と店の 前にテーブルを出しているので、歩行者天国では、あっちにもこっちにも気持ちよさそうに太陽を浴びながらお茶やビールを飲んでいる人がたくさん。

そこを通り過ぎながら、「ところで、皆さん、お仕事は?」と思う。なぜかシュトゥットガルトでは、お天気が良くなった途端、別に旅行者でもなさそう な人々が電光石火のごとく街角に現れ、戸外のカフェで寛ぐという現象が起こる。木曜日の日中なのに、ビジネスマンっぽい人も多いのが摩訶不思議だ。

ここのところシュトゥットガルトの歩行者天国を歩いていて感じるのは、路上で演奏している音楽家の質が、抜群に向上したこと。この日のハイライト は、町の中心の陽だまりの中で、一人静かに座ってクラシックギターを奏でている中年の男性だった。思わず足を止めた人々が、ギタリストを囲むように半円形 を描いていた。

路上音楽家の表情はさまざまだ。ロマらしき人々が、バイオリンやクラリネットで憂愁を帯びた曲を奏でているのは、ここ数年の傾向。アコーディオンや サックスフォンもけっこう多い。もっと正統派の演奏をする人たちもいる。たとえば、電子ピアノを持ち出して超絶技巧の曲を弾いているピアニストや、オーケ ストラ伴奏のCDをかけながら、一人で協奏曲を奏でているバイオリニスト。どこかのクラブで演奏していたのだろうと思わせる洗練されたジャズピアニストも いれば、コンサートと見まがうほど見事なマリンバの演奏も聞いた。

これは完全に音大出だとわかる人もいる。私も音楽畑の出身なので、そういうのはピンとくる。私はその腕前に驚き、同時に、「なぜ?」と言葉を無く す。これほど真摯な演奏をしているのに、前に置かれたケースの中に投げ込まれたお金は20セントとか50セントとか、ひどいはした金。一度はピアニストを 目指した身の上としては、ちょっと悲しくなる。

路上音楽家の質が上がっているのは、もちろん金融危機と関係があると思う。ソ連が崩壊し、東欧が民主化されたころは、そちらの出身者が圧倒的に多 かったが、ブルガリアやルーマニアがEUに加わってからはロマが増え、最近は南欧出身と思われる人が増えた。ギリシャレストランで流れているような音楽が 耳に飛び込んでくる。

景気が悪くなると、真っ先に首を切られるのが音楽家だ。音楽家など、いなくても生活には困らない。しかし仕事が無くなった音楽家は生活に困る。だから、少しでも稼ぐため、景気の良いシュトゥットガルトへやってくるのだろう。

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シュトゥットガルト通信

川口マーン惠美

シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。

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