FOK46—フォークオーケン46歳
【第9回】GIBSON B−25

30年以上音楽活動を続けてきた、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ。楽器演奏と歌を歌うのを同時にできないという理由で、ボーカルに徹してきた彼が、2012年、ギターの弾き語りでのソロツアーを始めた。その名も『FOK46(フォークオーケン46)』。46歳という歳に、ギターを始めた彼の胸には何があったのか。6年ぶりの小説連載です。

 その頃、まったく僕はアコースティックギターの試奏という行為に魅せられてしまった。

 試奏をお願いすると、愛想のいい、逆に仏頂面の、さまざまな表情をした楽器屋店員が、僕の指差した一本を、ネックの5フレットのあたりを握ってつかみあげてみせるのだ。
 吊り上げられたばかりの魚のように人の手の握りによってギターが一時、宙に浮く。
 そのボディーは赤茶けていたり木目も鮮やかな菫色であったり、一体何があったのかザックリと表面に無数の傷を有していることもある。
 いずれにせよ幼女、もしくは人体の型をした伝説の植物マンドラゴラほどのサイズでありながらそのボディーは、成熟した女性の体のごとくくびれを持ち、ものによってはもどかしい大人の女のくちびるのなまめかしさでつやつやと濡れたかの光沢さえ放っている。

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小説 FOK46—フォークオーケン46歳

大槻ケンヂ

30年以上音楽活動を続けてきた、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ。楽器演奏と歌を歌うのを同時にできないという理由で、ボーカルに徹してきた彼が、2012年、ギターの弾き語りでのソロツアーを始めた。その名も『FOK46(フォークオーケン4...もっと読む

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