巨瀬亮一は将棋ソフトの開発を始めるにあたって、まず最初に「うさぴょん」開発者・池泰弘の著作を読んだ。Bonanzaメソッドなどは、あまり理解していなかった。そうして、なんとか動くプログラムができた。
名前はAWAKEと名づけた。巨瀬に由来を聞いてみたが、特に意味はない、という。英単語としては、「起きる、覚醒する」などの意味だ。
2012年、コンピュータ将棋選手権に初めて出場した。初出場組のSeleneやAperyと同じく、一次予選は通過したが、二次予選では上位ソフトに及ばなかった。
2013年の選手権の前に、Bonanzaメソッドを取り入れた。やねうらおの完全解析ブログが参考になった。しかしこの年も、二次予選で敗退した。
同年、電王トーナメントが始まって、参加した。ストックフィッシュも取り入れ、この時にはかなり強く、前評判も高かった。予選を通過し、本戦トーナメント1回戦ではCalamityに勝利。出場決定戦となる2回戦に進出した。対戦相手は、やねうら王である。好勝負が期待された。しかし、AWAKEは18手目、まだ序盤の段階で動かなくなってしまった。直前にまで試行錯誤を重ねた結果、バグが取りきれていなかったのだ。じりじりと時間は過ぎていく。AWAKEは目を覚まさない、やがて時間切れ負けとなった。
最終日は5位決定トーナメントに回った。そこで習甦と対戦するが、今度は中盤の70手目で動かなくなった。不運が続いて、AWAKEは電王戦出場の機会を逃した。
2014年の選手権では、決勝リーグに進出する実力は十分にあった。しかし二次予選は10位だった。Seleneが9位で、Aperyが8位。2012年初出場組がきれいに並んだが、わずかの差で、Aperyだけが決勝リーグに進むことができた。
「Aperyが優勝したけど……。その時はAWAKEの方が強かったと思うんです」
普段はあまり表情を変えない巨瀬が、ふっと笑ってそう言った。二次予選ではAWAKEがAperyに勝っていたのだ。巨瀬はライバルの名として、Aperyを挙げている。Aperyの優勝は幸運だったし、逆に、AWAKEの二次予選敗退は不運だった。
完全覚醒
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