第27回】AWAKE誕生

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前線を追った『ドキュメント コンピュータ将棋』が3月25日発売。本連載では、本書から特に電王戦FINAL出場者たちの素顔や想いの部分を抜粋して紹介していきます。

 巨瀬亮一は将棋ソフトの開発を始めるにあたって、まず最初に「うさぴょん」開発者・池泰弘の著作を読んだ。Bonanzaメソッドなどは、あまり理解していなかった。そうして、なんとか動くプログラムができた。

 名前はAWAKEと名づけた。巨瀬に由来を聞いてみたが、特に意味はない、という。英単語としては、「起きる、覚醒する」などの意味だ。

 2012年、コンピュータ将棋選手権に初めて出場した。初出場組のSeleneやAperyと同じく、一次予選は通過したが、二次予選では上位ソフトに及ばなかった。
 2013年の選手権の前に、Bonanzaメソッドを取り入れた。やねうらおの完全解析ブログが参考になった。しかしこの年も、二次予選で敗退した。
 同年、電王トーナメントが始まって、参加した。ストックフィッシュも取り入れ、この時にはかなり強く、前評判も高かった。予選を通過し、本戦トーナメント1回戦ではCalamityに勝利。出場決定戦となる2回戦に進出した。対戦相手は、やねうら王である。好勝負が期待された。しかし、AWAKEは18手目、まだ序盤の段階で動かなくなってしまった。直前にまで試行錯誤を重ねた結果、バグが取りきれていなかったのだ。じりじりと時間は過ぎていく。AWAKEは目を覚まさない、やがて時間切れ負けとなった。

 最終日は5位決定トーナメントに回った。そこで習甦と対戦するが、今度は中盤の70手目で動かなくなった。不運が続いて、AWAKEは電王戦出場の機会を逃した。
 2014年の選手権では、決勝リーグに進出する実力は十分にあった。しかし二次予選は10位だった。Seleneが9位で、Aperyが8位。2012年初出場組がきれいに並んだが、わずかの差で、Aperyだけが決勝リーグに進むことができた。
「Aperyが優勝したけど……。その時はAWAKEの方が強かったと思うんです」
 普段はあまり表情を変えない巨瀬が、ふっと笑ってそう言った。二次予選ではAWAKEがAperyに勝っていたのだ。巨瀬はライバルの名として、Aperyを挙げている。Aperyの優勝は幸運だったし、逆に、AWAKEの二次予選敗退は不運だった。

完全覚醒


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ドキュメント コンピュータ将棋

松本博文

プロ棋士と互角以上の戦いを繰り広げるまでに進化した将棋ソフト。不可能を可能にしてきた開発者たちの発想と苦悩、そして迎え撃つプロ棋士の矜持と戦略。天才たちの素顔と、互いのプライドを賭けた戦いの軌跡。今日までのコンピュータ将棋に関する最前...もっと読む

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